4.忘れかけていたもの
泉奈と出会って三ヶ月、真夏の太陽が照りつける昼下がり、俺は会社の同僚に呼び出されていた。
会社の同僚…そう、それが俺の彼女
「最近冷たいわね」
「そうかな…?」
「冷たいのは今に始まったことじゃないけど、最近特に冷たく感じる」
それはそうだろう、俺には恋愛感情がないんだから…
「あたしのことどう思ってる?」
「…好きだよ」
いつもの嘘、もうつくことにためらいはない。
「ほんとなの?」
「いつも言ってるだろう」
少し視線をそらす俺
「なら、どうしてデートしたいって言っても、断ったりするのよ?」
「…それは」
何も言えない…
「何よ?」
「それは…疲れてるからだよ」
顔を背けてしまった。
「はぁ〜」
溜め息をつく海里
「いつもそうね、素っ気ないわね」
「…」
「しょうがないわね、こんなあなたを好きになってしまったんだから」
開き直ったような海里
言えない…あいつが好きだなんて…
「今日の夜…」
不意に彼女が口を開いた。
「今日の夜、会えないかしら?」
「ああ」
「6時に会社の前ね」
「…ああ」
行ってしまった…俺には海里もいた…泉奈はたたの友達…そうそれ以上の何者でもないんだ…