2.初恋の予感
次の日も俺はあの公園へ行った。泉奈の
「また会えるといいですね」
という言葉を胸に…
昨日と同じ時間、また猫を連れた彼女が現れた。
彼女は俺を見つけると
「うわぁ、また会いましたね」
嬉しそうに笑う彼女に微笑み返す俺
「毎日お散歩してるんですか?」
「いや…昨日から…ここの桜を見に…」
とっさに適当な口実を作ってしまった。
「へぇ、私もなんです。この公園の桜ってすごくきれいでしょ?だから春になるとお散歩に来るんです」
少しずつ二人の距離が縮まってゆく…俺は今までにないような幸せをかみ締めていた。
しばらく公園に通う日々が続いた。そしてあの日がやって来た。
「もう…桜散っちゃいましたね」
悲しげに桜を見つめる泉奈
「もうここには来れないですね」
俺はとっさに彼女に尋ねた。
「春しか来れないの?」
彼女は葉桜になってしまった木を見つめ
「この子も私も…桜か好きだから…だから毎年、桜の咲く頃だけ来るんです」
桜の咲く頃だけ…俺は泉奈の寂しげな瞳を見つめていた。
「せっかく潤さんにも会えたのに…」
俺は泉奈と離れたくないという思いでこう言った。
「あ、あの、お、俺とお友達に…なってください」
さすがに相手は中学生…付き合ってくれとは言えない…
少し間を置き、彼女は不思議そうに言った。
「私と潤さんはずっとお友達ですよ」
「…」
俺が沈黙していると、思い付いたような泉奈の一言
「そうだ、交換日記しましょうよ」
「交換日記?」
「はい、私、男の人と交換日記するの夢だったんです」
嬉しそうな彼女、それを見て俺の心が癒されてゆく…
そして、俺たちは週に一回、この公園で日記を交換することを約束し、桜の散ってしまったここを後にした。