君と二人で 9
「うん。なかなか良いんじゃないかな」
一時間ちょい経ってからようやく智祈が喋り出した。話し方や態度がいつもの智祈に戻っている。
「霞月って設定変だよね、奇抜って云うか…」
「ん?それの主人公って何だっけ?」
「料理好きの探偵」
あー、あれね。うんと頷く。
「初め犯人を当てずっぽうに言ってるだけかと思ったもん」
HAHAHA☆適当にこいつ人殺しそうだなって奴を犯人にしたからな!
「それで探偵が料理に例えて犯人の行動やら動機を見事に当てちゃうんだもん」
「レシピ調べんのめんどーだったよ」
欠伸を噛み殺す。いつもより長い時間寝たのに眠い。
レシピ通りに切って炒めて味付けして盛り付けという順に人を動かして行けば簡単だがそれの逆、犯人の行動と類似した料理を探したから苦戦した。
逆にやるべきだったが書いている時は夢中で全く考えていなかった。プロット立てても脱線してしまい最後までそれ通りに書けた試しが無い。だから主人公と大まかな設定を決めたら書き始める。その方が書けるし俺らしい。
けど実際こんな奴は小説家に向いてないんだろうな。そう思うけどなかなか出来ない。
「次どんなのにするか決まったの?」
ノートをパラパラと捲りながら訊いてくる。
「一応」
「プロットは?」
「頭の中にある」
「無いのね」
冷たく返された。
「主人公が普通の人でそいつの一週間でも書こうかと。」
今回はほのぼのとしたものを書こうと思っている。
智祈が読んでいる時に考えていた事を説明する。
「霞月の思う普通の人ってどんなの?」
「へ?」
予想外の質問をされて戸惑う。普通は普通なんだからどんなのって訊かれても…
「普通は普通だよ!」
胸を張って答えたが智祈は溜め息を零すだけだった。
ぐぬぬ。ここは書いて証明するしか無いのか…!
普通がダメなら何だ…何かいいアイデアは無いのか…
「まぁ別にいいけど、他は?」
あっさりと投げ出された。
ニヤリ
そういう事か。