君と二人で 5
「おーきぃーろぉー!」
肩を揺すられ起こそうとする声が聞こえる。
寝みぃ…
朦朧とした意識の中で何となく思う。
「起・き・て!」
ゴンッ――
頭に何ともいえない衝撃を受けて慌てて飛び起きる。
あれ?智祈がいる。夢…?
夢なのか現実なのか分からずボーっとして辺りを見回す。場所は俺の部屋で寝る前と変わらない。
いつもの癖で正面よりやや左上に掛けてある時計を見ると針は11時丁度を指していた。ちなみに祖父が時計屋を営んでいるという事もあり部屋には目覚まし時計が3つに掛け時計が5つある。俺が見た時計は掛け時計の中で一番大きい時計だ。
やっと完全に目が覚めて久しぶりにまともに寝たと思った。いつも本を読むか小説を書くかで睡眠時間が優先されることが少ない。
って、んん゛?
妹の声が聞こえた気がしたと思い辺りを見回すが誰もいない。
あちゃー、ついに幻覚が見える程俺の頭は妹しか考えてないのか、と楽観的に考える。
とりあえず着替えよ。昨日風呂入ったか記憶にねぇーや。布団もひかずに寝たって事はたぶん帰って即ばたんきゅーだったのだろう。
シャワーだけでも浴びようと立ち上がる。ついでに近くに置いてあった服を適当に取る。
「よっこらせー」
Tシャツを脱ぎながら風呂場へ向かうと「ふあ゛ぁ!?」とよく分からない奇声が聞こえた。
驚いて後ろを振り向くと妹が台所から顔を覗かせていた。あら可愛い。
「どした?」
やっぱり来ていたという至福感と幻覚じゃなかったという悔恨の情で変な声が出た。くねってる感じで…気持ち悪い。自己嫌悪。
「…ふっ、服きてぇー」
慌てて台所に引っ込んで言う声は次第に小さくなって聞こえる。
やべ、今の超録音したかった…!
悔しくてつい壁に頭をぶつける。
いってぇー!!今変な音した。智祈がこっち見てるよ。うわ、恥ずかしい。
余りの痛さに涙目になりながら妹を見つめる。
赤面したままの妹は挙動不審な動きをしていて小さい子供みたいで愛らしい。多分冷やすべきか迷ってるんだろうなーと冷静に考える。
結局智祈は台所で彷徨っている間に俺は風呂場に向かった。