君と二人で 22
「ん、それで智祈は見舞いに来る度に本を読んでくれたんだ。それで何ていうタイトルだったかな、…そん時ベストセラーだった本があって俺がそれを読んでって頼んだんだよ。そしたら“嫌だ”って断られたんだ。
そんなの有り得ない。
何故かと訊くと智祈は一言“嫌いだから”と口にしただけでそれ以降その本の話は一度もしてない。」
「……。」
「可笑しいだろ、どんな物語だろうとあいつは喜んで読んだ。いっつも嬉しそうに感想言ってたんだぞ。それが嫌いってたった一言で済ませるなんて…」
本当に信じられない事だった。
俺にとっての一番が妹のように妹にとっては本が一番だった。
絶対に嫌いになるはずがない。
そりゃ智祈にだって物語の好き嫌いはあるはずだ。でもどんな物語だろうとあいつは愛している。
「その本が原因の一つである事に間違いはない。」
「何でそう言い切れる?」
「勘。」
「勘をそこまで自信気に言う奴初めて見た。」
「俺の勘は当たるんだよ!どっかの金持ち野郎とは違って。」
「俺の勘は間違っていると言いたいのか?」
やっぱり優くんは面白い。思い通りの反応をしてくれるから楽しい。嫌なのには変わりないだけど。
あれ、何の話してたっけな?…あぁ、本だ。
「捨てたかもしれないな」
呟くと優くんは目を合わせてきた。驚いたが反応しないように気をつけた。
優くんも頑張ってるから。人の努力を無駄にするような行動はしないって決めている。
「どんな内容だった?」
「どんな…」
思い出そうと記憶を辿る。
あの頃読んだ本……確か主人公は学生…小学生がいた?そうだ。
何となくだが少し思い出してきた
「まだはっきりとは思い出せないけど…確か、主人公には一人で孤独だった。でも彼に友達ができた。まだ小学生の小さな友達。彼の唯一の友達…だった。
主人公は人が苦手だったんだ。理由は忘れたけど…」