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2. 帝国の危ない策略です。ただし、楽しそうなので嫁ぎます。



文体から滲み出る情緒がジェットコースターです(←イヤコイツ何言ッテルノ?)。読みにくくて申し訳ない、、、

なんとか修正したいです。





「……は?けっこん?」

シアナは耳に飛び込んできた単語を思わず聞き返す。


「ごめんなさいお父様、どうやら耳がおかしくなってしまったようなので、もう一度お伺いしてもよろしいでしょうか?」


美しい笑みを浮かべながら首を傾げるシアナ。

銀色の髪に翠の目をした少女は、久しぶりに化粧をして、派手ではないがしっかりとした仕立てのドレスを着ていた。

普段は離宮で暮らしているシアナだが、珍しく父王に呼ばれ、国王の執務室にいるためだ。


粉をはたき、垂れ目気味にアイライナーを引くと、シアナはたちまち儚げな容姿になる。


だが現在、シアナからは笑顔という名の圧が放たれていて、とてもではないが儚げとは言い難い。

シアナの背後からゴゴゴゴ…という謎の効果音が流れている気がする。


それに相対するシアナの父、エストニアス国王は、齢50近くになった親しみのある顔を神妙にし、先程話した内容をもう一度繰り返した。

「うむ、実はな、結婚の話が届いたんじゃ。」

「誰に?」

「お主に。」

「どなたとの?」

「アルメリア帝国の皇太子殿との。」

国王の執務室はしばらく無音になったのち、シアナの絶叫が響き渡った。




その後、シアナの絶叫を聞きつけて、国王の執務室には、3人の人物が次々と乱入してきた。

シアナの義母にあたる王妃様に、王妃様の第1子で王太子である義兄、そして王妃様の第2子で第1王女の義姉だった。


3人に状況を説明すると、あっという間に阿鼻叫喚の騒ぎとなる。


王妃様は「は?この子を帝国にですって?体のいい人質をと言っているようなものじゃないの!」と憤慨し、

義姉は「あなたが辛い思いをするくらいなら、私が代わりに行きます!」といつになく取り乱し、

義兄も「いっそ死んだことにすればこの話は無かったことになるよ!」と言って出ていこうとしたので全力で止めた。

あの様子はおそらく、止めていなければその足で偽装の死体を用意しに行っていたと思う、切実に。


「こうなると思って、まずはシアナと2人で落ち着いて話そうと思っとったのに。」とすすり泣いている国王に、シアナは謝罪を口にする。


「ごめんなさい、つい驚いてしまって。私に結婚の話は一生来ないと思っていたから。

帝国からの、という部分より、婚姻話、という部分に過剰に反応してしまいました。

人質要請であることは想定内なので、特に問題ないですよ。帝国側は、『病弱でも構わない、公務能力はなくて良い。』と言っているようですし。

つまり彼らが必要としているのは『王族の血筋を引く者』を人質として保有すること自体。むしろ願ったり叶ったりですね。

このお話、是非お受けしたいです!」


「あそっちに反応したの⁉︎」

「えお受けするの⁉︎しかもなんで嬉しそうなの⁉︎」

「シアナ、あなた反応する部分がずれているわ!それに喜ぶ部分もおかしいわ!」

「……シアナはノリノリで『嫁ぎに行く』と言うだろうなと思っておったよ……。」



その後も、シアナが嫁がなくて良くなる方法を模索しようとする過保護な4人と、なぜか嫁ごうとするシアナの、激しい攻防が続いたが、シアナは4人が上げていく案を、ひとつずつ潰していった。


「こういう時のために、私がいるんですよ!今まで自由にやってきた分、たまには王族らしく、政略結婚したいです!」

そう宣言したシアナに、一同はもう呆れ返って何も言えない。


結局シアナが嫁ぐこと以上に合理的な案は出ず、そして何より、シアナ本人がこの婚姻を強く望んだ事により、『そんなにシアナが望むのならば』と、全員渋々了承してくれた。


この攻防は、シアナの完全勝利で幕を閉じたのだった。



〜・〜


「と、いうわけで、アルメリア帝国に嫁ぐことになりましたー。」

いつもと同じようにやってきて、まるで『木苺を採ってきたよ。』とでも言うように、あっけらかんと報告したシアナに、ミランダは絶句した。


アルメリア帝国は、大陸の中央に位置する軍事国家だ。

近年、周辺国を次々と合併し、急速にその勢力を拡大している。

結婚などと言ってはいるが、軍事力の強い帝国が、我が小国に政略結婚を迫るということは、それすなわち『人質を寄越せ』という意味である。断るとどうなるのかは、あまり考えたくない。


元伯爵令嬢のミランダは、事の重大性を正しく把握すると同時に、シアナの意外な選択に驚いた。


「どうして嫁ぐことにしたの?てっきりあなたは誰とも結婚したくないのだと思っていたわ。あなたの性格なら、嫌なことは国を滅ぼしてでも拒否しそうなものだけれど。」

ミランダは訝しげな表情をシアナに向ける。


「……師匠の中の私って、一体どうなってるのさ……。さすがに祖国を滅ぼしてまで自由に生きたいとは思ってないし。こんなんでも、一応この国の第2王女なんだよ?国の役に立ちたいと思うのは当然でしょ?」

ミランダの評価に、シアナは顔をしかめて頬杖をついた。


「……まさかあなたに王族としての自覚があっただなんて。今まで生きてきた中で1番驚いたわ。」

「ぐぬぬ、確かに今までやりたい放題してきたから、言い返せない。」

悔しそうに拳を握り、わざとらしく歯を食い縛るシアナを横目に、ミランダはハーブティーのカップに口をつけ、一息つく。


「帝国からの要求を拒否することは、宣戦布告と捉えられてもおかしくないし、戦争になれば、国が潰れるかもしれない。だからあなたを嫁がせるのが最善策である事は間違いない。

そのはずなんだけど……。あなたを嫁がせると、それと同じかそれ以上に厄介なことになる気がするのよ!」

正面に座るシアナの方へずい、と身を乗り出すミランダ。


いつもどこかおっとりしているミランダの、予想外の剣幕に、シアナは軽く仰け反った。


「正直あなたの心配は、あまりしていないわ。『人質として嫁いできた、公務能力のない我儘で癇癪持ちな病弱女』とか言われて不当な扱いをされたとしても、鋼鉄メンタルなあなたにはノーダメージでしょうよ!

問題は、あなたがこれから一生、帝国で病弱のふりして大人しく暮らすとは、とても考えられないということよ!」

ミランダが一気に捲し立てる。


差し迫った表情で熱弁するミランダに戸惑っていたシアナだったが、次第にぱあっと顔を輝かせる。


「さすが師匠!私のことよく分かってるね!でも私、こう見えて病弱なふりは結構得意だから、大丈夫だよ。人前に出る時はいつもしてるし。」


「そういう問題じゃない!」

ミランダのツッコミは、もはや叫び声に近くなっていた。


シアナは、呑気に茶菓子を口に放り込み、ハーブティーを一口飲んで、言葉を続ける。

「まあ……大人しく出来なさそうなのは否定しない。私は自分の自由な生活を諦めるつもりは無いよ。

でも、かと言って故郷であるこの国を、帝国の良いようにさせるつもりも無い。詳しい事は、帝国に行ってから、状況を見て考えるつもりだけど……。」


先程とは打って変わって、翠の瞳に鋭い力を宿し、静かに語るシアナ。


この子、やっぱり何かやらかそうとしてるわ、とミランダは内心で頭を抱えた。


「私が嫁げば、今まで迷惑かけてきたお父様にも恩返しできるし、この国にも貢献できる。そして何より、ただの政略結婚よりも、ずっと楽しそうじゃない⁉︎」


「なるほど、最後のが本音ね。」

シアナが再び生き生きとした表情でそう言ったのを聞いて、ミランダはどっと疲れが押し寄せて来るのを感じた。盛大なため息と共に、作業机に突っ伏す。


そんなミランダにはお構いなく、シアナは椅子から立ち上がり、右手の拳を突き上げた。

「取り敢えずは、今までみたいに人前では病弱なふりをするかな。『我儘で癇癪持ち』っていう部分は嘘の噂で、『病弱である』ことの方は真実だ、って思ってもらえるように振る舞う。悪い噂を払拭して、全力で病弱のふりして乗り切ってやるわ!」


「……結婚おめでとう。生き残れるように頑張ってね。」

声高々に決意表明を述べるシアナを前にして、考える事を諦めたミランダだった。










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