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春の子

作者: 冲田

北のまちでは雪が溶けはじめ、南のまちでは草花の芽が地面からのぞき、お花のつぼみがふくらんでいます。

春が近づいているのです。



「もうそろそろぼくはお休みしたいのに、春の子は またお寝坊してるのかな?」


冬の子は南のまちに様子を見に行ってみました。


「おーい、春の子さん! もう南は春にしなくっちゃ! みんなが待ってるよ!」


冬の子は春の子を起こしました。


「ふわぁ……。もうちょっと寝ていたいなぁ……」


春の子は大きくあくびと伸びをします。


「ほらほら、もう待ちきれないお花たちが 咲いてしまっているよ」


冬の子は春の子がしぶしぶと起き上がったのを見て、少し心配そうに北に戻りました。





「春の子さん、春の子さん、おきておきて!」


猫が 春の子に向かって言いました。


「うぅん、まだ眠いよう」


「早く春になってくれないと、花咲く野原で ひなたぼっこができないよ」


「そうだね、春の子は仕事をしなくっちゃ」


春の子は葉のない木々や、これから芽吹く草花を起こしました。


少し北のまちまで来ると、またふわぁとあくびをして うたた寝をはじめました。





「春の子さん、春の子さん、おきておきて!」


農家の人が 春の子に向かって言いました。


「うぅん、まだ眠いよう」


「早く春になってくれないと、作物の種がまけないんだよ」


「ごめんごめん、春の子は仕事をしなくっちゃ」


春の子はまた少し北にいって、あくびをふわぁ。 うたた寝をはじめました。





「春の子さん、春の子さん、まだ寝てていいよ」


お兄さんが 春の子にそっと言いました。


「うぅん、まだ眠いよう」


「よしよし、そのまま寝ていてね。あたたかくなると 鼻や目がムズムズするんだ」


「わかったよ。春の子は……え⁉︎ 寝てていいの⁉︎」


春の子は首をかしげながら少し北にいくと、お言葉に甘えて うたた寝をはじめました。





「春の子さん、春の子さん、おきておきて!」


夏の子が一足先にやってきて、春の子に向かって言いました。


「うぅん、まだ眠いよう」


「そんなに眠るのが好きなら、もう俺が仕事 始めちゃうぜ? 元気にあばれまわりたくって うずうずしてるんだ」


「それはさすがに早すぎるね。がんばって起きなきゃ」


春の子は少し北に行くと、またふわぁとあくびをして うたた寝をはじめました。





「春の子さん、春の子さん、おきておきて!」


女の子が 春の子に向かって言いました。


「うぅん、まだ眠いよう」


「あのね、桜が満開になったら 私に妹ができるのよ!

ねぇねぇ起きて! 早く妹に会いたいな!」


「わぁ! それは素敵だね! ようし、はりきって桜さんを起こさなきゃ!」


春の子は桜の木を起こしました。

つぼみのひとつひとつに声をかけて、花を開くお手伝いもします。


そのうちすっかり目も覚めて 隣の桜もその隣の桜も 花壇のお花も、ついでに起こしてまわりました。

このまちの桜がすっかり開いたころ、女の子の家では元気な赤ちゃんが産まれました。


女の子もお父さんもお母さんも、とっても幸せそうに笑っています。

春の子も、つられて笑顔になりました。


「春の子さん、ありがとう! 桜や花壇のお花がきれいに咲いたら 妹が産まれたよ!

 赤ちゃん、とっても とっても かわいいわ!」


「ふふふ。 赤ちゃん おめでとう! お姉ちゃん おめでとう!」





春の子が満足げに北のまちに向かうと、冬の子が困った顔で待っていました。


「やれやれ。なかなか来ないから迎えに来たよ。いっぱい うたた寝していたね?」


冬の子が春の子に言いました。


「冬の子さん、心配かけたね。もうちゃんと起きたよ。素敵な出会いがあったんだ!」





春の訪れを待ち望んでいた北のまちの人たちは 嬉しそうに春の子を迎えました。


「おはよう、おはよう。春の子さん! 待ってたよ!」


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