ササっと終わらせた後に
「報告は?」
「………………報告します。魔王軍がこちらへ宣戦布告し……グラム王国に死者が出たため直接魔王領へ行き……破滅しました」
「そんなにショックだったか?」
「そりゃそうでしょ!魔王を素手で倒すとか本当に人間ですか!?」
「人間なんだよな〜……」
「そんな遠い目で言われても……」
「言っておくが最初に攻撃してきたのは魔王軍側だ。こっちに責任はない」
「略奪する時間もありませんでしたからね」
誰がこんな結果を想像するだろうか。たった30分で魔王を倒すだなんて。
南幹部は人間が止められる存在なんかではなかった。魔王は最強だ。こんなの誰でも知っている。物理攻撃が聞かないのは当たり前だし、魔法も精神干渉も効かない。攻撃力は一撃で都市が焦土と化すレベルだ。普通倒せるわけがない。
南幹部が別格過ぎた。物理攻撃が効かないと南幹部に伝えたら
「じゃあ結界張るよ」
「何をする気ですか」
「心配するな。殴るだけだ」
そう言って世界最強クラスの結界を張ると次の瞬間、結界の中が真っ白になった。結界は音も閉じ込めるため音はしなかったが、もし音が出ていたら間違いなくその音波で世界が滅亡していたっておかしくなかったとだけは言える。
想像ではあるが殴ったときのエネルギーで元素が全て崩壊したのだ。そうでなければ結界の中の土が綺麗サッパリ消えていた理由を説明することができない。
荒木田幹部も強かった。兵士が洪水で流されるが如くといった感じでぶつ切りにされていって兵士がかわいそうと思ってしまうほどの強さだった。
戦場での同情は本来絶対にしてはいけないことナンバーワンだ。でも命が……軽すぎやしないだろうか。
この組織に入って初めて、魔物の哀れな運命というものを感じた。今度あそこに来る機会があったら碑を建てねばと感じるほどだった。
「やっぱり強すぎるな。流石『16強』に入るだけあるな」
総長がそうボソッと呟いたのを僕は決して聞き逃さなかった。
「なんですか『16強』って?」
「ああ、官統率長から総長までを含めた称号だ。人間を除けば世界最強だ」
人間を除けばの部分がすごく気になるところだがこれ以上話を脱線させてしまっても意味がないのでさっさと戦後処理の話についてしなければならない。
「魔王領は一応我々の領土になるそうだ。そこら辺の問題は領土問題の対処が得意な部署に任せればいいわけだが……問題は君も分かっているな。それは……」
「「戦場の後始末」」
信じられないくらい息ぴったりだった。南幹部が壊したのは半径50キロメートルだ。50メートルではない。何をどうやって鍛えたらこんなすごい結果を残すことができるのか不思議でたまらない。
そんな大きい穴に何を入れると思うか?
聞いたら『海水』だという。土がもうどこにもないらしく復活させる方法も分からない。ただ地震の影響で海水が一気に流れ込んできて水没させることができるかもしれないのでその時をただひたすらに待ち続けるという。
何年かかるんだ。
「ざっと20年以内?」
…………大地震が来るならもっと早めにいうべきだと思う。
「文献が見つかったもが先週だからな。すぐに発表するつもりさ」
「思ったんですけど南幹部の影響で地震の周期が狂ったり、なくなったりとかは……」
「それはない」
「そこは断言するんですね」
「結界を張っていたんだろう?振動の影響が外まで響くわけがない」
信頼というかなんというか。よく分からなくなってきた。
「もう一つの問題は、南の強さがバレたことだ」
………………隠してたの?
「いや、相手が魔王だったからしょうがないよ?でもね、こうなってくるともう南は公的な場所に出られなくなるよ。だって怖がられるじゃん」
「だとしたら南幹部まずくないですか!?」
「もうこうなった以上しょうがない。君、幹部昇格だ。交渉上手いし貫禄あるから」
「すみません、聞き落としました。僕、階級落とされるんですよね?」
「逆だ、逆。昇格」
「……南幹部は?」
「諜報部で活動してもらうしかないな。まあ、そっちが本職だし、いいよね?」
自分に告げられたこの昇格の二文字に、体が固まった。信じられなさ過ぎて完全にスルーしてしまった。
「……………………」
「どうした?南なら……」
「そうじゃなくて‼‼‼‼なんでこんなに早く昇格させるんですか‼‼おかしいでしょ‼」
「俺もおかしいと思う。経験が少ないもの。でもね、南がいなくなったらまともな奴が減っちゃうんだよ」
「『16強』ってよく組織の頂点に立てたものですね」
「言ってやるな。アイツらがいないとこの組織上手く回らないから」
「いったい誰がまとめるんですかって……僕か」
「一緒に頑張ろう!」
明らかにこの総長の目は(苦労を分かち合う)仲間ができて嬉しがっている目だった。
だが実際に僕が苦労するのはこの組織のまとめでもなんでもなく、4人の『怪物』になるだなんて。知る由もなかった。
あの時に戻れるならいつでも戻りたいと思った。
何も失いたくないから。




