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第一話 前世?刺されて死にましたが何か

「付き合ってください!」

「好きです。良ければこれ受け取ってください!」

 そのような言葉をどれだけ言われただろうか?

 あまり『断る』という行為が得意でない俺は、それらをのらりくらりと躱してきた。

 告白に了承してこなかった理由は、ただ一つ。

 それは、俺の身の周りにハーレム状態が構築されているから。だが、別に俺はハーレムを望んでない。

 最初の方は、自分なんかにもったいないと思っていたが、今となってはこれ以上ハーレムを進行させるのはまずい。その一心で告白を躱し続けた。

 そして今日も今日とて俺は告白を受ける。

「ずっとずっと大好きで、四六時中見てました。私の愛は本物です!私と結婚してください。そして永遠に愛し合いましょう。」

 たまにいる。頭のネジが数本ぶっとんでそうな子が。

 現代日本において一夫多妻制は認められていない。

 つまり俺はいつかハーレム状態から抜け出し、1人の相手と結婚することになる。

 そんな中で厄介なのがこーゆー恋は盲目という言葉を具現化したような存在。

「えっと、その…俺に君みたいなかわいい子はもったいな。」

「ううん。そんなことないから気にしないで。」

「いやでも、俺の周りにはたくさん女の子が…いや、彼女とかそういうんじゃないからあれなんだけど…」

「大丈夫。周りなんて見られないくらい私に夢中にさせてあげる。」

 なんとか相手を傷つけずに諦めてもらおうと言葉を紡ぐが、すかさずフォローというなの刃を俺の首に立てる。

「実は俺、結構変態なんだよね。性癖も特殊だし。」

「そうなんだ。どんな性癖?」

 俺の言葉に全てポジティブな返答を返す今回の子はいったい何なのだろうか。

 いつもならここらへんで一旦諦めてもらえる。

 まぁ、その後に「そんなところも好き♡」って感じでハーレムが進行していくわけなのだが…

「えっと…ドMとか?」

 もちろん嘘なわけだが、ここまで来ればさすがに引いてくれるだろう。

 だって冷静に考えて、嫌いだから罵倒し、ムカつくから殴るのに、それを快楽として受け止めてしまう男は女性からしたら不快そのものだろう。

「へ〜、なら簡単だね。すぐに私なしじゃ生きていけなくしてあげる。」

 この子は何を言っているのだろう。

 そんなことを考えていると

「っ・・・ゔ!」

首に華奢な手が添えられ、その細い腕からは想像もつかない力で酸素を断たれる。

「どう?興奮する?あ、でもこれだけじゃ足りないね。」

 そう言って片手で何かを取り出そうとする女。

 俺は首を絞める手が片手になったことで少し息ができるようになり、安堵する。

 それも束の間、さっきまで何かを探していた手の中にはナイフがあった。

「や…め、っろ…」

 俺は必死に声を出し訴えかけるが

「わかってるよ。こうやって抵抗しようにもできない状況が好きなんだよね。」

全く伝わっていない様子。

 告白が行われるにあたり人気のない高校の校舎裏に俺達はいるので、誰かが助けに来る可能性は限りなく低い。

 建物から漏れる日光がナイフに反射し、一瞬視界が白に覆われる。

「じゃあ、たっぷり私に依存してね。」

 そこからはまさに地獄。

 絶命に至らない箇所を何回も何回も刻まれ、刺され、抉られる。

「た…すけ…助けて、誰か。」

 この地獄が永遠に続くかと思われた。

 しかし、天は…神様は俺を見放さなかった。

「あれ?どうしたの?え、私急所は外してたよね?」

 血に塗れたナイフ片手に困惑の言葉を漏らす女。

 そんな言葉を聞きながらも、俺の意識は遠のいていく。

 そうか、出血多量だ。まぁ、女は急所を外しても止血はしてなかったもんな。

 永遠の眠りに就く前、俺は決心する。

『来世があるなら、一途に生きよう。』


「ゼウス父様!起きました!」

 俺が目を覚ますと、若い女の声が響く。

「はぁ…」

 死ぬ前も死んだ後も女とは…

 思わず溜め息を吐いてしまう。

 すると目の前にいる女性はこちらに振り向き、少し俯きながら優しく言葉を発する。

「あなたのこと見させてもらいました。最後はその…」

「いえ、あまり気を使わないでください。」

 目の前の女性はまともなようだ。

「そういえば、ここは?」

 俺はあたりを見渡しながら尋ねる。

「そんなことはどうだっていいわ。遠くから見た時から思ってたけど、なかなかにイケメンね。これは、なんとしてでも手に入れなくては…」

 前言撤回。全然まともじゃない。

「どうかしら、私と契約しない?してくれたらその…私のこと好きにしていいわよ?」

「え、えっと…」

 胸を押し上げ、モジモジしながら俺を見つめる女性。

 俺が困惑していると、年老いた男の声が響く。

「やめんか!ヘルセ!」

 その声にヘルセと呼ばれた目の前の女性はビクっと体を震わせる。

「すまぬ、うちの娘が失礼した。」

「は、はぁ…」

 情報を処理しきれず、俺は口をあんぐりさせる。

「まず最初に自己紹介からするかのぅ。わしの名はゼウス。お主も名前ぐらいは知ってるはずじゃ。」

 ゼウス…確かだがギリシャ神話の最高神で宇宙や天候を操る神様のはずだ。

「はい。」

「ほれ、お主も名を…」

女餅(じょもち)世一(よいち)です。」

「うむ、世一よ。お主は一度死んだ。だが、ここは冥界というわけではない。」

 ゼウス様は淡々と現状を語る。

「ここは神域という現世と冥界(死後の世界)(さかい)にある空間。神域にはそこを所有する神が許可する者以外入ることはできぬ。」

「ではゼウス様が私を招いてくださったのですか?」

「いや、わしではない。」

「私よ!」

「ヘルセ様でしたか?なぜ僕をここへ?」

 俺の問いかけに、ニヤリとほくそ笑むヘルセ。

「あなたのことを気に入ったからよ!」

「は?」

「はぁ…」

 俺の疑問符とゼウス様の溜め息が重なる。

「ずっと、あなたのことを見ていたわ。」『ずっとずっと大好きで、四六時中見てました。私の愛は本物です!私と結婚してください。そして永遠に愛し合いましょう。』

 俺を刺殺した女の発言が重なる。

「大変な人生だったわね。」

 俺が警戒していると、髪から優しい感触が伝わってくる。

 俺の頭を撫でるヘルセの顔は慈愛に満ちていた。

「相手を気遣い、傷つけないように考えられる。その優しさに心を惹かれたわ。」

 次々と発せられる言葉。

 それを聞くたびに心臓の鼓動が加速する。

「そこで私はゼウス父様に相談して『女餅世一』という人間に二回目の人生を恵むことにしたわ。」

 俺がゼウス様を見ると、何も言わず一度頷かれる。

「二回目の…人生?」

 俺は自分の手のひらを見つめる。その行動自体に意味はない。

 そんな意味のない行動をしてしまうくらい、俺の頭は混乱していて、それと同時に俺の心は激しく高鳴っていた。

「お主が今からするのは転生。赤子の状態からやり直すこととなる。」

「最初は転移を試みたのだけど、肉体がひどく損傷していて、転移にはとても耐えられそうになかった。生まれてすぐは、いろいろ不便になると思うの。ごめんなさい。」

「いえ、こうして機会をもらえただけで感謝です。」

 俺の言葉にゼウス様とヘルセは穏やかな笑みを浮かべる。

「そう言ってもらえると助かるわ。それじゃ、もうそろそろ転生させるわね。」

 ヘルセが言うと、足元に陣が現れ、白く発光する。

「お主の人生が幸福であることを祈っとるぞ。」

「またいつか。」

 俺の意識が白に呑み込まれる前、二人の神様が言った。


「行っちゃいましたね。」

「うむ。」

 世一を転生させた私は、父であるゼウスに語りかける。

「「・・・」」

 そしてしばしの沈黙の中、私はある重大なミスに気がつく。

「あぁぁぁぁあ!『加護(チート)』のこと言い忘れてたぁぁあ!」

「何をしとるんじゃ、ヘルセ!」

 騒々しさから再び沈黙。

「・・・ま、なんとかなるか。」

「じゃな…」

 なんとも楽観的な神親子であった。

 この後始まる無自覚系鈍感主人公の暴走に頭を悩ませることになることを知らない二人は優雅にお茶を啜る。


 赤子の泣き叫ぶ声。ぼやける視界。思うように動かせない己の四肢。

 転生したのだと理解するのに、少々の時間を有した。

「う、産まれたぞー!」

「あなた…産まれたのね。」

 意識を覚醒させるや否や騒がしく声を上げるまだまだ若い男性と、俺の手を優しく包みながらその男性に語りかける女性。

 女に一度刺し殺されたのに目の前の女性に嫌悪を感じないのは、ヘルセとの会話のおかげか、それとも母親だからか。

 真意はわからないが、俺は本当に転生したらしい。

 泣き叫んでいるのにここまで冷静にいられるのは、前世の記憶を持ち成長した精神が備わっているからであろう。

「おめでとうございます。元気な男の子ですよ。」

 視界がぼやけていてはっきりとしないが、おそらく看護婦あたりだろう。

 その報告を受けた両親は言う。

「お前の名前はワンドだ。」

「優しい子に育ってね。」

 女餅世一()の人生は終わった。

 そして始まる。

 新たな、ワンド()の人生が…

次回に続く

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