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奉公先
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十二で奉公にあがったさきは、そのころ繁盛していた唐傘屋ののれん分けした店で、蛇の目傘や絵入りのはやりものを多くあつかう店だった。
この店主はもとの店での若番頭で、新しい店をもつのといっしょに嫁にした女は、どうやら大旦那が通っていた、三味線だか常磐津だかのお師匠さんで、商いのおかみにはむかないようだった。
その女のおつきの女中ということで、オウメはここにきたのだ。
店はそれなりに大きく、繁盛していた。
本元のお店とはあつかうものがちがうので、客のすじもちがい、取り合いにはならなかったし、《のれんわけ》といっても、店をもたされた《若番頭》が切り盛りしていいわけでもなく、元の店から来る大番頭と若旦那に命じられるままの商売をするだけだった。