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おれが追いはらう
ばあさんはお茶を飲み込むようになんどかうなずくと、ちがうならいい、といいきった。
「トメヤさんが心配になっただけじゃ。 ヒコさんがおれば、わしがいってた《ネコマタ》がきても平気じゃろ」
かか、と歯のないくちをあけてわらうと、たちあがって、ヒコイチのまえの膳をかたづけようとする。
「おい、まだ厚揚げも食ってねえよ」
「はよお食べんと、このババに《ネコマタ》のおむかえがくるのが先になる」
「こねエよ。 ―― きたって、おれがおいはらう。 まだ、今年のタケノコの煮物だって食ってねえし、糠床だって、ぼっちゃまだって、面倒みるのは、ばあさんしかいねえだろう? そうそう、あの《黒猫》に前、ばあさんからもらった団子食わせたら、うまいって言ってたぜ」
ばあさんは歯のない口をぽかんと開け、団子を食べたかい、となんだかまゆをよせて、わらうような顔をした。
つぎで終わりです




