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《ネコマタ》は引き継がない
「 ―― このババにな、その《ネコマタ》が、声をかけよった」
「 っはあ?」
「オタキさんが亡くなって、無縁仏さんになったんで、せめて線香だけでもと思うてな。 そこで手をあわせておったら、汚い三毛猫がでてきてな」
おまえ、おれがしゃべるの黙っていられるなら、おれの見聞きしたことを教えてやろう
「年取った女のこえで、そういうからな、あっちへいけ、と怒鳴ってやった。 あの《ネコマタ》がオタキさんの仇をとったかどうかなんて、どうでもよかったわ」
「それで?その《ネコマタ》はどうしたよ?」
「それきりよ。怒鳴ったのに、ひとこえ鳴いて、どこかへ消えたわ。 まあ、しばらくは、こわかったがなあ。わしはとなりの小間物屋さんに雇われて、燃えた店あとに隠した銭をほりにいくときもこわかったが、もう、あとは、なにもなかった」




