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つくりばなし
オタキは困ったようなわらいをうかべると、やさしい声でこぼすよう口にした。
「 ・・・オウメちゃん、あたしじゃないよ」
「 ―― うん、わかった。突き落としたのは、その、《ネコマタ》なんだね?」
ようやく、いつもの顔つきになったおんなが、さびしげに首をふった。
「オウメちゃんは、ほんといいこだ。あたしの《つくりばなし》をすぐに信じるなんて」
「 え? 」
「 ―― いいかい、オウメちゃん。もどったら、今夜はあの店にいたらだめだよ。布団にはいったふりで、すぐに外へにげるんだ。 それから、騒ぎがおこったら、すぐにお隣の家の戸をたたくんだよ。けっしてお店の中に戻っちゃいけないよ。大事なものは、庭のすみにうめておいて、あとでとりにいけばいい」




