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ちがう ちがう
オウメの必死な声に、女のおおきなわらいごえがかぶり、牢屋のなかでひびきわたる。
「 だって、そんな猫がほんとにいるなら、ひとだって襲うだろ? あたしの里のほうじゃ、《ネコマタ》は山にすんでて、人を襲うんだよ」
さらに力をこめて訴える。
すると、オタキはようやくわらうのをおさめ、オウメちゃんは、いいこだねえ、とめもとをぬぐった。
「 ―― なんで、そこまであたしじゃないって思うんだい?」
「だって、・・・奥様がしんだとき、オタキさんはあたしをむかえにきてくれたもの」
「あの女を殺してからきたのかもしれないだろ?」
「ちがう、ちがう。オタキさんじゃないよ」
なんだか、こどもの駄々みたいになってきたが、オウメはそれをいいつづけたかった。




