前へ目次 次へ 4/52 トメヤさんの黒猫 そのばあさんとひさしぶりに台所で顔をあわせたヒコイチが、みやげで持ってきた豆大福の代わりに出されたふつうの大福にかぶりついて、ばあさんがフキに塩をふり、まな板にころがしはじめ、フキの香りが鼻にとどき、死んだじいさんとのことを思い出していたら、いわれたのだ。 「 ヒコさんや、あの、トメヤさんに居ついとる黒猫は、ネコマタじゃろう? 」 と。 ―――――― ざばり、とザルにあげられたフキを、また溜めた水につけるまで、ヒコイチも年寄りもだまったままだった。