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ネコマタのしわざ
オウメは、やはり、オタキがこわかった。
つい、牢獄の格子から、身をはなした。
すると、われにかえったオタキと、ようやく目があった。
ぞわり、と寒気がはしる。
「お、オタキさん、・・・《奥様》のかんざしを盗んでたってほんとかい?」
「 ・・・かんざし?」
「《旦那様》が、《奥様》のかんざしや、なくした根付を、オタキさんの行李のなかでみつけたって・・・」
「 あたしの・・・?」
「ねえ、オタキさん、ほんとうに、オタキさんが《奥様》を橋から突き落としたの? ちがうよね?もしかして、ほんとは、 ―― さっき言ってた、その《ネコマタ》のしわざなんじゃないのかい?オタキさん、まえに、あたしに、どのあたりで奥様とわかれるか聞いたじゃないか。それを《ネコマタ》におしえて、それで、《ネコマタ》が《奥様》にとびかかって、橋から落ちたんじゃないのかい?」




