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わかってる
「 じゃあ、やっぱりオタキさんは『頼まれ』たんだね」
あのときの、《奥様》の言ってたこととはちがって。
だからあのとき、あんなに怖い顔をしてにらんでいたのだろう。
ところが、ふっと、息をつくようにしたタキが首をよこにふる。
「・・・あの女・・・わかっててあんなふうに言ったのさ。あたしと《若番頭》さんがずっとまえからできていて、それをわかったうえでここにいるんだってのを、このあたしにしらせたくって、あんな顔でいいのけやがったんだ」
だん、とこぶしで簀の子のようになった板の間をたたく。
「夜だって、だんだんとあの女とやるのがふえていってるのだって、こっちはわかってるんだ。手玉にとったつもりが、あんな年増の女に手玉にとられて、あたしから離れていって、二人になってもこっちのことを女中みたいによびやがって!」
だん、とまたたたくと、叫びだすかとおもった口の歯を、ぎ、っとかんで、こらえたが、くらい場でも、オタキの顔が赤くなっているのがわかった。




