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新しい店
「・・・あたしは捨てられるとおもった。 なのに、いっしょに新しい店にきてほしいっていわれたよ。手のだせない女と暮らすなんてつまらない、ってね」
嘘だとわかってはいたが、たしかに、大旦那様はいつくるかわからないのだ。
オタキは、こらえられないような声をこぼしてわらった。
「 店も女も手にいれたってのに、あたしがいないと生きていけないなんていうから、こっちからは切るにきれなくってね・・・」
あたしもあのひとのまねをしてみたのさ、とわらう。
のれん分けしたので屋号はおなじ。そのことで新しい店を心配する大番頭に同情するような顔で、こそりと、「きっと若番頭さんだけでは『家』のことはできませんでしょう、あたしが手伝いにまいりましょうか?」とオタキがいうと、たしかにあの女は家のことなどやらないだろうと若旦那もうなずき、わるいけどオタキついていってくれるかい、と頼まれた。




