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大奥様が飼っていた
「 あの猫はね、しゃべるんだよ。 ―― あたしがこっちにでてきてはじめに奉公した家の大奥様がかってた三毛猫でね、そのときからしゃべってる。 あたしはそれを一回みちまってから、大奥様がぜったいにひとに言うなっていうのを守ってたけど、・・・それからすぐに大奥様が亡くなったら、・・・猫があたしに話しかけるようになった」
おまえ、おれがしゃべるの黙っていられるなら、おれの見聞きしたことを教えてやろう
「 だからあたしはそのことをだれにもいわず、奉公先がかわるときには次の奉公先を、その猫におしえてた」
猫はさきまわりするように奉公先の庭先に姿をみせ、オタキがひとりになるところにあらわれては、先に見聞きしていたことを、こまかく教えてくれた。




