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誰にきいたか
線香はたしかにそなえたが、手をすこし合わせてみたほどですぐに、オウメがいつも待っていた団子屋にいこうといった。
頼んだ団子がとどくまえから、オタキはなんどもうなずいて、大旦那様もあんな女に出会っちまって運がないねえ、となんだかさっぱりしたような顔でいて、オウメにはそれが、うれしそうな顔にみえた。
「 ―― まあ、大旦那様はまだ、きりたくなくって手の届くところに置いたつもりだったんだろうさ。でもねえ、まさか、《女の方から縁切りをきりだす》なんて、思ってもいなかったんだろうねえ」
「オタキさん、それ、お役人にきいたの?」
「 まさか。お役人はそんなこと教えてくれないけどさ、あたしの、 ―― あたしの顔見知りが、あのお茶屋の台所で働いてて、おしえてもらったのさ。 それに、まちでもそういう噂でもちきりだから、お店があけられないんだよ」




