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ぼっちゃまとばあさん
ばあさんは、まえに『蓮池の 』に、でてきておりますので、よろしければそちらも、ひろってやってください。。。
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このばあさんは通いでぼっちゃまの世話をしている年寄で、愛想もなく歯もないが、頭もからだもしっかりとしていて、なによりさっぱりとした気性なのが、ヒコイチも気にいっている。
なにか気にいらないところがあれば、じかに言ってくるし、意外なところで行儀や作法にうるさいが、それは雇い主のぼっちゃまに対してもおなじで、ヒコイチとしては、『おぼっちゃま』がこどものように怒られているのをみるのが楽しい。
まえにぼっちゃまに、としよりの素性をきいたが、「知らない」と返されておどろいた。
だが、それにつづいた「いいひとですよ」という自信ありげな様子でなっとくした。
このぼっちゃまは、そういうじぶんの『おもいこみ』が、いままではずれたことがない、と豪語する男なのだ。
そして、ぼっちゃまがこの年寄を『いい人だ』と評するいちばんのわけは、他人のうわさばなしをしないところだ。