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三毛猫
その日も、いつもの団子屋にすわり、ゆっくりと串にかじりつき、むこうで独楽をかってもらう子どもや唄っている唐辛子売りをながめていたら、串からはずしそこねた団子を落としてしまった。
ここの団子屋はこぶりの団子を五つ串にさしているので、まだひとつあるが、落としのはもったいないし、とおもい、拾おうとしたのに、さっとよぎった影にさらわれた。
三毛の毛艶もよくない猫で、すこしはなれたところで、ごっ、とむせると、くちから団子をはきだしていた。
オウメがおもわずわらうと、こちらをみた猫が、不服そうに、ナア、と鳴いてみせ、そのままむこうの八つ手の茂みへきえてしまった。
そうしてその日、《奥様》は、 オウメと落ち合うことができなかった。