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わらう奥様
「それは、あたしんだ!」
袋を奪い返そうととびつき、あばれる音で、すぐに《奥様》が見に来て、ためていた銭のことがしれたが、おくさまはタキをちらりとながめ、それはオウメのものだ、とうすくわらった。
「 あたしがオウメにあげた小遣いなんだから、オウメが勝手にしていいんだよ」
きっ、とにらみかえしたオタキは、これは店のお金だから、《旦那様》にかえす金だ、といいかえしたが、《奥様》はさっきよりも、にいっとわらい、「あたしが旦那様からもらった金なんで、あたしがどうしようと勝手だろう?」とききかえした。
「 ―― それともオタキ、おまえ、あたしになにか、文句でもあるのかい?」
わらったままの奥様はつづけた。
「 そういやアおまえ、 ―― うちの《旦那さま》がこの店をまかされたとき、どうしてもついていきたいって、大番頭さんに泣きついたらしいねえ」
泣きついた?たのまれたんじゃなく?
きいていたはなしと違い、オウメはオタキの顔をみた。