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怖がり屋さんは失せもの探偵  作者: Suzugranpa
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第73話 爆弾2発目

 マダム・シルヴィーは嬉しそうにスマホを眺め、パスワードをメモに書き留めている。結構危ないパターンなのだが、今の千沙にはそれを指摘する余裕がない。マダムの話が本当なら、あ、あたしはどうなる。店を閉めたスタジオ・ジュリの2階に一人ぼっちで取り残される? そ、そんな、怖ろしい…。


 マダムが顔を上げた。


「そうそう、ジュリが来るのは4月の真ん中くらいかな。もしかしたら準備が遅れて5月になるかも」


 いや、そう言うこと以前に…、千沙はマダムの顔を伺う。


「えっと、スタジオ・ジュリはやめちゃうんですか?」


 マダムはまた怪訝な顔を見せる。


「チサはパパから聞いてないの?」


 パ、パパ? 誰? 未来も首を傾げている。


「千沙のお父さんって、行方不明じゃなかったっけ?」


 今度はマダムが首を傾げた。


「行方不明? チサのパパ、ムッシュ・ヴェントは行方不明じゃないよ? ラ・ミストラルで元気でしょ?」


 はい? ムッシュ・ヴェント?


 千沙の口はまた塞がらない。未来もポカンと口を開け、何も言えないでいる。


「む、ムッシュ・ヴェントって、あの、店長さん…?」

「そうよ。何言ってるの? 交代するのよ店長が。ムッシュ・ヴェントからジュリに。知らないの?」


 え? うええー!?


 千沙の口からは、声にならない声が洩れた。


「そうなのか!」


 未来が手を叩く。


「道理で反応薄いなって思ったんだ。千沙が来るって店長に報告した時ね、普通なら『へぇー友だちってどんな子?』とか聞くじゃない。それが何も聞かないで頷いただけで、でも千沙の部屋作りは一所懸命だったのよ。これで寝る時痛くないかなとか、暗くないかなとか、いろいろ聞かれた。心配だったんだあ。良かったね、千沙。行方不明の大きな失せものが見つかって」

「そ、そう言われても、突然過ぎて…」

「あ!じゃあさっきシルヴィーが言ってたシルクロードって」


 マダム・シルヴィーがその後を引き取った。


「日本語ではキヌよね。東洋から情報が来るから私はシルクロードって呼んでたけど」

「そっか、みんな仕組まれてたんだ。それで店長が交代って、今度はスタジオ・ジュリの店長が、ムッシュ・ヴェントってことですか?」


 未来が深堀りした。


「それは知らない。私はジュリが来ることしか知らない。きっとムッシュは日本に帰るのだろうとは思うけど」


 マダム・シルヴィーはハンバーガーの続きを食べ始めた。まだ困惑している千沙の肩を、未来が優しく撫でる。


「さすがは探偵千沙ね。失せもの二つ見つけちゃったね、パスワードとお父さん。あ、樹里さんのお母さんを入れると三つか。パパが判って良かったじゃない。ムッシュ・ヴェントはいい人だよ。私、何だか羨ましい」


 そ、そうだ。まだ実感湧かないけど、未来はお父さんともう永遠に会えないんだ…。樹里さんのことも含め、気持ちの整理にはまだ時間がかかりそう。だけど、それはみんな悪い話じゃない。未来が羨ましいのは当たり前だ。


 千沙は急に俯いた未来の肩を優しく抱いた。



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