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怖がり屋さんは失せもの探偵  作者: Suzugranpa
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第65話 マロンのベッド

 翌日、学校が終わってから、千沙は莉亜の自宅マンションを訪れた。まずは自宅から探してみようということになったのだ。莉亜の母親との挨拶もそこそこにして、莉亜の部屋から探し始める。莉亜の部屋は6畳ほどの洋室。ベランダもある特等室だ。部屋に入ってまず千沙の目に入ったのは、学習机と同じ位の大きさのアクリルケースだった。小さなテーブルの上に置かれている。中にはミニチュアの小屋やシーソー、用途が判らないプラスティック製の丸いものが入っていて、一面に薄茶色のウッドチップが敷き詰められていた。


「これは?」

「あ、これハムスターのお家なんです」

「ハムスター?」

「はい。マロンって名前のクリーム色の子がいるんですけど、どこ行ったかな?」


 莉亜が周囲を眺める。見渡すと部屋の中には板で出来た通路のようなものがあちこちに渡されている。


「もしかして、これってそのマロンちゃんのお散歩道?」

「あ、そうです。運動させなきゃいけないんで放し飼いにしたいんですけど、そこら辺を通るといろんなものを齧っちゃうし、踏んづけても困るので作ってもらいました。思った通りにはいかないんですけど、夜はちゃんとここに戻って寝てます」

「あらあら」


 莉亜はアクリルケースの中を眺めている。


「あ、多分、あそこです。潜っちゃうんです。本人は土を掘ってるつもりだそうです」


 莉亜が指で指した先はウッドチップが心なしか盛り上がっている。


「なるほど。ちゃんと自分の居場所を作ってるのねぇ。逃げたりしないんだ」


 千沙は感心しきりである。


「はい。これって蓋がスライドして閉められるので、この中に入れておきたい時とか、寒い時には閉めてあげるんです。あんまり寒いと冬眠しちゃって良くないって、ペットショップの人が言ってました」

「冬眠は駄目なの?」

「はい、寿命が縮むそうです。ケースの中も人があんまり勝手に触ると嫌がるって言ってました。自分で自分が寝るところを作りたいそうです。だからなるべく広い場所を用意してあげると、潜っていろんな部屋を作れるからいいって言うので、このケースもこんなに大きくなっちゃって」

「へーぇ」


 野生の動物を部屋の中で育てるのだから、逆に条件がいろいろ発生するのだろう。千沙は小学校低学年の頃、教室にあった蟻の巣を思い出した。あれも透明なケースに土を入れて、蟻が通路や部屋を作っているのを観察できた。と、言うことは、マロンちゃんの寝顔も見れるかな。きっと可愛いに違いない…。


 千沙はイヤーマフを他所に、腰をかがめ、ケースを横から眺める。ウッドチップは10センチ位の深さだ。下から見たらもっとよく判るかも。屈んだままアクリルケースの周囲を回る。


 ええーっと、マロンちゃんはどの辺りにいるのだろう…。 あれ?


 千沙はアクリルケースの下方から、敷き積もったウッドチップを透かし見た。似てるけど違う色が見える。千沙は立ち上がってケースを眺めおろす。


「莉亜ちゃん、この中は探した? イヤーマフ」


 莉亜は驚いた表情を見せる。


「いえ。ここはあんまり触らないようにしてるし…あ!」


 莉亜は先ほど自分で指さしたウッドチップの盛り上がりをじっと見つめる。ちょうどケースの真ん中の奥。そしてそっと手を入れてウッドチップを掻き分け始めた。


「あった!」


 千沙もその指先をのぞき込む。ウッドチップの中にクリームイエロウの『もふもふ』が覗いている。


「保護色になってるね」


 イヤーマフとウッドチップはお揃いカラーだった。更にウッドチップを掻き分けると…


ウッドチップに埋もれたイヤーマフの真ん中で、クリーム色の小さなハムスターが丸まって眠っていた。


「起こしちゃ可哀想かな」


 千沙が呟くと、頷いた莉亜はまたせっせとウッドチップをマロンに被せる。そして笑った。


「すみません、忘れてました! 前に私が家に帰って来て、マロンどこかなぁってここを覗いた時、マロンがここで初めて鳴いたんです。小さな声でキュッキュッって。だから、私、よく聞こうと思ってすぐにイヤーマフを外して、この蓋に置いて覗き込んだんでした。それでマロンが鳴いたよーってお母さんに報告に行ったんです、ハムスターって滅多に鳴かないんですよ! そしたらキッチンでお鍋が吹きかけてて、慌てて火を止めてお手伝いして…、すっかりマロンとイヤーマフ、忘れてました! すみません」

「へーぇ、じゃあ、その間にイヤーマフが落っこちたんだ」

「たぶん。マロンが落としたのかな。それでせっせと埋めちゃったんですね。ベッドが来た!って思って」

「可愛いね」

「はい!」

「莉亜ちゃん、どうする? 取り返す?」


 莉亜はもう一度ウッドチップの膨らみを眺めた。イヤーマフにぴったり嵌って眠るマロン。取り上げるなんて…出来ないよ。


「マロンにあげます」

「そうね。それがいいみたい」


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