第58話 公平に
「あの、店長さん」
千沙はおずおずと切り出す。
「うん? 何か判った?」
「念の為なんですけど、その大トトロを確認して頂けませんか? きっとおうちにあるんですよね」
「そう、まだおもちゃ箱入りはしてなくて、クリスマス終わるまでは飾ったままよ。何を確認するの?」
「袋を担いでいないか…」
浜崎店長も目を見開く。
「やだ! そんな気もする」
浜崎店長はすぐにスマホを取り出し、一足先に帰った母親に連絡した。
「もしもし! あ、お母さん? あのさ、葵の大トトロ見てくれる? この前買ったやつ。まだリビングボードに飾ってあるでしょ。あれさ、袋担いでない?」
浜崎店長は、足で拍子を取りながら返事を待っている。
「あ、担いでる? それ、多分サンタさんの袋なのよ。お店から無くなっちゃったのよ。うん、判った、有難う、ごめんね」
スマホを下ろした浜崎店長は、満面の笑みを千沙に向けた。
「大正解! なんで判ったの?」
千沙はメモ帳の落書きを店長に示した。
「下手ですみません。えっと、中トトロはこんな風に袋を持っていますけど、大トトロは持ってなかったなぁって思って、朔が、あ、長沖君がショーケースの下で葵ちゃんの野菜の半分を見つけたので、もしかして、葵ちゃん、今度は野菜を持って一人でショーウィンドウに入っちゃったかなって。きっと遊び場と思ってますよね。小さいからショーケースの下に潜れますし、一度入ってるから、くぐり戸なんてすぐに覚えて開けちゃいますよね。2歳児はスーパーチャイルドって聞いたことあるので」
浜崎店長は大きく肯いた。
「ははぁ。その時にサンタの袋をみつけて取っちゃったってことね。トトロにもくっつんくんだねぇ。全然気づかなかった」
店長はメモ帳の絵をもう一度眺める。
「アナログも捨てたもんじゃないわね。それで閃いたのか」
千沙は照れながら続けた。
「若葉さんがトイクロスならマジックテープがくっつくよって仰ったから、もしやって思ったんです。葵ちゃん、サンタさんにたまたまピーマンとニンジンをくっつけて気がついたんじゃないでしょうか。この袋が大トトロにくっつくかもって」
千沙は一旦息を継ぐ。
「きっと葵ちゃんは大トトロに袋がないのが可哀想って、ずっと思ってたんでしょうね。だから公平に袋をつけてあげた。優しい女の子ですね」
「うん。それはいいんだけど、目が離せないなあ。ショーウィンドウはガラスだし、冒険は結構危ないんだから。あれ? 葵? どこ?」
店長が周囲をキョロキョロ見回したその時、当の葵ちゃんが駈けてきて、ショーケースの下に向かって頭からスライディングをした。
「うわ、葵ちゃん!危ない!」
慌てて朔がその両足を掴み、葵ちゃんは床の上をズズーっと引っ張り出される。皆が驚く中、葵ちゃんは自分で立ち上がると、朔に向かって人差し指を立てて見せた。
「もっかい!」
心優しい2歳児は埃塗れの笑顔である。




