第37話 お宝コイン
昼休み、お弁当を持って未来がやって来た。
「どう? なにか判った?」
「うん」
「マジ?」
「一挙解決。未来のお母さんの依頼」
「えー? なになに?」
千沙はお弁当の隣に預かった1ミクコインを並べた。
「がっかりさせちゃうかもだけど、未来のお父さんのコインコレクションってこれのことじゃない?1ミクコイン」
「え?」
「コインのコレクションって言うと埋蔵金みたいなイメージかもだけど、お父さんにとって大切なものって現金なものじゃない気がする」
未来は真剣な眼差しになる。千沙は続けた。
「ゴルフで自分のボールの場所にコインみたいな目印を置くルールがあるんだって。マーカーって呼ぶそうだけど」
「マーカー…」
「そう。自分の場所を見失わないようにってことなんだけど、1ミクをその為に使えば、お父さん、きっとどこに居ても未来と一緒って思えたんじゃないのかな。ボールの場所だけでなく自分の場所も見失わないようにって」
「自分の場所…」
「だって、出張が多かったんでしょ?」
千沙は未来の表情を伺いながら続けた。
「でもゴルフバックに入れてあったから、カラスが見つけて巣に持って行こうとした。カラスって光るもの大好きだから」
「カラス?」
「うん。昨日もたくさん居たじゃない。それで消防署の人がカラスの巣がショートしたって言ってたでしょ」
「うん」
「だけど巣が無くなっていたから怒ってあたしたちの上を飛んで、カァーって脅したのよ。で、その時に落っことしたんじゃないかな。だから嘴で咥えた時の傷がついてる」
千沙は傷ついた1ミクコインをそっと未来の方へ押し出す。
「なるほど~そっか。ドンくさい子だったのね。ちょっと可哀想だったかな」
未来はコインをじっと見つめた。
「じゃあ今度は私が海外留学に持って行こう。私も自分の場所を見失わないように」
「それがいい。未来のお母さん、埋蔵金じゃなくてがっかりかもだけど」
「ううん。本当に埋蔵金だったらそっちの方が厄介な気がするから、この方が良かった。お金は人をおかしくする」
「うん、この1ミクはドンくさいカラスが運んでくれたお父さんのメッセージなのよ。捨てないでくれーって」
千沙は微笑んだ。未来はこみ上げたのか目頭を手で押さえる。そして1ミクコインをじっと見つめると、
「有難う、本当に。危うく粗大ゴミになるとこだった。あのゴルフバックも回収して来ることにする。じゃ、今回の探偵料金は1ミクってことで、このまま千沙に進呈します」
「え?」
「これっぽっちって思うかもだけど、口止め料と相殺よ」
未来はにっこり笑い、目尻から零れた涙を指で拭いた。
「く、口止め料?」
「アイツのこと」
未来は千沙の顔を見たまま、指で教室の片隅を指した。
「あっ!」
「ふふん。千沙の表情ですぐに判っちゃう」
「あ、あの、あのね…」
「いいからいいから。朔って呼び捨てにする仲だなんて誰にも言わないから」
千沙は真っ赤になった。
「あっ、あの、そう言うのじゃなくって…」
「でもステップアップしたらこっそり教えてね」
「えー」
未来は顎を両掌に載せる。そして教室の片隅をちらっと見る。そこにはコロコロ変わる千沙の表情を愛おし気に見つめる朔が見えた。




