第33話 金目の話
「千沙、大事なお客さまだ。待合席にご案内しな」
「はい。でもクラスメイトですけど」
「そんなの関係ねぇ。朔とのことは黙っといてやるから」
樹里と千沙をキョロキョロ見較べていた未来は目を丸くする。
「千沙。朔とのことってなぁに? 長沖君でしょ?」
千沙の頭から蒸気が噴き出す。
「な、何でもないよ…。本当に、何にもないんだから…」
「大抵は何かある時にそう言うんだよねぇ」
未来は樹里の方を伺う。樹里は未来にVサインを見せて仕事に戻る。千沙は益々慌てた。
「ちょ、ちょっと、樹里さん、ちゃ、ちゃんと説明して下さい」
千沙の情けない声に樹里はまた振り返った。
「まだ育み中ってこと。お客様、ご依頼の件は後ほどじっくり伺いますので今しばらくお待ち下さい」
未来も喜んでいる。
「じゃあ、後でじっくり聞かせてもらおう、千沙」
ぎゃ、逆でしょ。じっくり聞くのはこっちでしょ。千沙の焦りは収まらない。
+++
益々美人になった梢も手を振って帰り、樹里はさっさと店をクローズにした。千沙は樹里に命じられて2階でコーヒーを淹れ、未来に振舞うもてなしようだ。
「で、大量のキャッシュが行方不明って話?」
早速樹里が未来に問う。
「そうなんです。母が言う話なんですけど」
「ふむ。お母さんの埋蔵金かな」
うう、樹里さんテレビの見過ぎ。そんな話をクラスメイトがここに持って来る筈ないでしょ。千沙は呆れた。
「いえ、お父さんのです」
「お父さん! パパ! 大黒柱!」
樹里はノリノリだ。未来がちょっと申し訳なさそうに続けた。
「あの、お父さんは私が小学生の時に亡くなってるんです。なのに母が最近突然思い出したんです」
「そうなのか。それはごめん。で埋蔵金を思い出したってこと?」
「埋蔵って言うか、コインのコレクションがあった筈だって」
「コイン! コレクターだったってこと?」
「そうなんですかね。母が言うには、父はこっそりそれを眺めてはニヤついていたって」
「そうか。高値がついたのかな。同じ100円玉でも発行年によっては500円くらいで売れるらしいからね。もしかしたら海外のもあるかもね。古代のメソポタミア通貨みたいな」
「ああ、父は海外出張が多かったって母が言ってました」
樹里の両眼には『¥』や『$』マークが踊っている。メソポタミア通貨? んなもん、長崎にあるかな。千沙は疑いの目で樹里を見る。
「で、そのコレクションはどこにあったの?」
「もしかしたら、お父さんの部屋かもなんですけど…」
「そこにはないと」
「うーん、実は1週間前にお父さんの部屋の断捨離をしたんです。七回忌が終わったからって」
「え?」
「で、その時に母が思い出して、断捨離しながら探したんですけどどこにもなくて」
「断捨離ってことは、いろいろ捨てちゃったってこと?」
「うーん。ですね」
「くわぁーっ。メソポタミアはゴミ処理場か…。きっついな、それを探し出すのは」
樹里の目が千沙に向けられた。
「よし。千沙、出番だ」
「えー?」




