表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怖がり屋さんは失せもの探偵  作者: Suzugranpa
28/81

第27話 報告

 へっ、へっくちゅ。


 うう、風邪? な訳ないよね、別段しんどくもないし。


 大騒ぎした絹が島へ帰って行った翌日、学校からの帰り道、千沙は小さく首を振る。あー、誰かあたしの良からぬ噂をしてるのかな、怖いな。何の根拠もない小さな不安を抱きながら、千沙はスタジオ・ジュリの扉を開けた。


「た、ただいま」


 カット席で二人が同時に振り替える。あ、梢さん…。


「お帰りなさい。今、ちょうど噂してたところなのよ」

「うわ」


 まさか本当に噂でくしゃみが出るとは…。千沙は心持ち緊張する。樹里が笑って櫛を振りかざした。


「ほら、この前の件のお支払いに見えて、ついでに髪の端っこを切り揃えてるところ。千沙はキューピットだってさ」

「キュ、キューピット?」


 千沙はカット席の横に回り込む。梢が千沙に微笑んだ。


「千沙ちゃん、有難う。お陰様で、兄は明佳ちゃんのお母さんと正式にお付き合いすることになったのよ」

「えー、マジですか?」

「そう。千沙ちゃんが誘導してくれたからよ。最初に見た時から、兄は憎からず思ったって。千沙ちゃんにはきっと見えたのよね」


 千沙はもじもじとした。あの時、普段なら口に出せない大胆な発言をしてしまったのだ。後先考えないで。


「あの、あたし、余計なことを言ったかなって、あとからちょっと後悔して。でもそれで良かったなら良かったです」

「そう? 自信ありげに聞こえたけどな。千沙ちゃんって普段は大人しいけど、いざと言う時には跳べる子なんだって、その時思ったのよ。まだ二人がどうなるかは判らないけどね」

「そうなんですか? 相思相愛に見えましたけど…」

「本人同士が良くても親とかいろいろあるのよ」

「へぇ」


 梢の髪の端っこを摘んでハサミを入れながら、樹里も言う。


「かっちりした桐原家のお嫁さんがバツイチ子連れって、そりゃ一波乱ひとはらんの予感よねぇ」

「そもそも若葉さん、あ、明佳ちゃんのママは、神田かんだ 若葉わかばさんってお名前なんですけど、最初の旦那さんが亡くなってから籍は抜いたんですって。まだ若いからやり直せるって旦那さんのご両親の意向もあるから、普通のバツイチじゃないんですよ。だから私は全然OKなんですけどね。明佳ちゃんも可愛いし」

「ほう。まあ、親の再婚には娘が複雑な反応を示すのが普通だけど、今回はその娘さんが新しいお父さんを実のお父さんと思い込んでるところが、いいのか悪いのか…」

「明佳ちゃんは実のお父さんの事、はっきりとは覚えていないそうです。まだ小さかったから」

「そうなんだ。でもいつか告らなきゃいけない訳だよね。お父さんは実は本当のお父さんじゃないんだよって」


 傍らで千沙も一応頷いた。結婚ともなると本人同士が好きでも、そう簡単には行かないんだ。言われてみればそうかも知れない。でもさ、親と結婚するわけじゃないし、好きにさせてあげればいいのに。


「でもね」


 梢は言いかけて、ちらっと千沙を見る。


「でも、今度のことで兄は本当の兄に少し戻った気がするんです。そこは感謝です、千沙ちゃんに」


 梢は微笑んだ。しかし、千沙はその笑顔から『責任』という得体の知れないものが転がって来るように感じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ