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ショートショート9月〜4回目

いぬがいる

作者: たかさば

最近、わが家に…いぬがいる


大胆に、パワフルに

豪快で、派手な動きをする


いぬは、私に…存在をアピールしている


足元に、強引に突っ込んでくる…無邪気の塊

皮膚に、これでもかと押し付けられる…もふもふの毛束

顔面に、ぶしゅぶしゅと吹きかけられる…ケモノの呼吸

背中に、無遠慮に突き刺さる…キラキラとしたピュアな視線


姿を見たことはないが…確かに、いぬがいる


しっぽを振る気配

こちらを見上げる気配

明らかに接近している気配


やや長毛の、大型犬だ

子供っぽいので、若いはずだ

こちらの都合を気にしない、自己中心的な性格だ


姿は見えないが…確かに、いぬがいる


色はわからない

犬種はわからない

声はわからない


どうしてここにいるのかは、わからない


…もしかしたら、迷い込んでしまったのかもしれない


かつて共に暮らした家族を探して…この家にたどり着いた?

……ここには、孤独な人しかいないというのに


人恋しくなって…この家にたどり着いた?

……ここには、いぬとはしゃいで喜ぶような陽気な人はいないというのに


……かわいそうな、いぬ


こんなつまらない場所で

こんな面白くない場所で

こんな冷え切った場所で


ただひたすらに…自分の欲を満たすために、しっぽを振る

ただひたすらに…自分と遊んでほしいと、駆けまわる


……出ていかないところを見ると、気に入っているのかもしれない


もしかしたら、この家に…安息を見出している?

もしかしたら、この私に…ふれあいを見出している?


自分はどうしようもない存在なのだと……塞ぎ込んでいた気持ちが、少しだけ、上を向く


ただの気配でしかないいぬに…私は、癒されていく

姿も形もないのに、いぬはこんなにも…私を癒してくれる


明日は、少しだけ手を伸ばして…そっと、抱きしめてみよう


喜んで、くれるだろうか

怖がったり、しないだろうか


私はお前のことが好きだよと…と知らせてやろう


今まで塩対応だったことを謝ろう

これからは、思いっきりかわいがってやろう


お座りや、お手を教えたい

声も聞いてみたい

お腹をもふもふしたい


私は忙しくなりそうだと思いつつ…、破顔することを止められなかった

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[一言] 居ぬが確かに居る
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