8 極魔導師ユーフェミア
その後、出会ったのが極魔導師と呼ばれる少女ユーフェミアだ。
彼女はティアナやカトレア、イングリットよりも年若いが誰よりも早く勇名をはせていた。
それは生まれ持った魔力の大きさや才能によるところが大きい。
ユーフェミアは歴史に名を遺すほどの、魔法の天才だった。
「あなたが聖騎士ティアナ……?」
ユーフェミアはどこか茫洋とした表情で彼女を見つめる。
「初めまして、天才さん」
「ユーフェミアでいい。天才と呼ばれるのは好きじゃない」
と、ユーフェミア。
「じゃあ、ユーフェミアと呼ばせてもらうわ。あたしはティアナでいいよ」
「ん。了解」
「天才と呼ばれるのが好きじゃない、ってどうして?」
ティアナがたずねた。
「自分は努力の人だから、とか?」
「んー、努力はしてると思うけど、そういう理由じゃない。そもそも私が天才なのは事実」
ユーフェミアが淡々と語る。
「単に『あなたは天才』って言われ過ぎて飽きた。あと、『才能』のなんたるかも知らない人間に『天才』って呼ばれたくない」
「なるほど……」
「あなたもそうでしょう? 剣の天才さん」
「……まあ、そうね。あたしだって他人よりもはるかに努力してると思うし。単純に『才能』で片付けられると、何とも言えない気分になるかも」
ティアナが言った。
「だけど、あなたの想い人に才能はない」
「えっ」
「あなたが才能を愛する人間ならやめておいた方がいい。彼からはまるで才能を感じない」
と、ユーフェミア。
「彼って……まさかシオンのこと?」
「いえす」
うなずくユーフェミア。
「……って、ちょっと待って。あなた今、『想い人』って言わなかった? あたしは別にシオンのことなんて――」
「惚れてる」
「っ……!」
ストレートに言われ、ティアナは思わず絶句した。
「ち、ちが」
「お見通し。バレバレ」
ユーフェミアの目がこちらをまっすぐ見つめている――。







