7 弓聖イングリット
カトレアの治癒魔法の効果は高く、シオンは間もなく回復した。
「すごい……傷が完全に元通りだ……!」
驚いた顔でシオンはカトレアに向き直った。
「ありがとうございました」
「いえいえ、元気になられてよかったです」
「本当にすごいです。こんなに強力な治癒魔法は初めてかけてもらいました」
「あら、そんなに褒められると照れてしまいますわ」
「俺、ちょっと感動して」
「そこまで言っていただけると、がんばって治癒した甲斐がありますわ」
「あ、俺はシオンといいます」
「聞き及んでおります。最近、騎士団で目覚ましい成長ぶりを見せている若手の騎士さんがいる、と評判ですもの」
「えっ、そうなんですか」
「どんな猛者かと想像していたので、まさかこんな素敵な少年とは……あ、えっと、すみません」
「い、いえ、そんな……」
二人は顔を赤らめて話している。
(……なんか、ちょっと面白くない)
ティアナは思わず口を尖らせた。
まるで二人がイチャイチャしているように見えたのだ。
(……って、別にこの二人がイチャつこうと、あたしには関係ないはずよ。何考えてるんだろ、あたし……)
まさか、自分がシオンに対して嫉妬している――?
いや、そんなはずはない。
そもそもシオン程度の男が、自分に釣り合うはずがないのだ。
彼女に釣り合う男がいるとしたら、それは大国の王族とか歴史に名を遺す英雄といった『格』がなければいけない――。
さらに転戦しているうちに、今度は弓聖のイングリットと出会う。
「へえ、君って強いね~」
イングリットはティアナの戦いぶりに感心した様子だった。
「それにそっちの相棒さんも」
と、シオンに目を向ける。
「ど、どうも」
シオンが照れたように一礼した。
「……ねえ、シオンって結構女好きじゃない?」
「えっ、なんで!?」
シオンが驚いたような顔をした。
「この間のカトレアといい、イングリットに対する態度といい……デレデレしてるじゃない」
「あれ? 二人ってそういう関係? ティアナ、嫉妬してない?」
「は、はあ? なんであたしが!」
イングリットの指摘は、ティアナにとって予想外のものだった。
嫉妬?
自分が、こんな男に――?
以前にも自問した事柄である。
「そんなはず……ないでしょ」
唖然となりつつも、心の奥底では否定しきれないものを感じていた。
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