4 激闘、ティアナVSアーニャ1
「きゃあっ……」
すさまじい吹雪にティアナは大きく後退した。
ほとんど視界も効かないような猛烈な雪だ。
その場にとどまっていたら、相手の攻撃がどこから来るのかも分からず、あっという間に斬り刻まれていただろう。
「シオン、無事!?」
「大丈夫です……!}
振り向けば、背後にシオンがいた。
どうやら彼も素早く危険を察知して跳び下がったらしい。
だが、他の兵士たちの大半はその場に立ち尽くしていたらしく、
「ぐあっ」
「がはっ」
苦鳴があちこちから聞こえてくる。
「くっ……」
助けに行きたいが、吹雪の中に飛び込んでも一方的に打ちのめされるだけだ。
ティアナは動けなかった。
「ちくしょう……」
シオンもそれは同じだろう。
悔しげに表情を歪めている。
しばらくして――吹雪が晴れた。
大半の兵士がその場に倒れている。
いちおう全員生きているようだが、ダメージを受けて起き上がれない様子だった。
「殺してないよ~。ヴィラちゃんに可能な限り殺すな、って言われてるからね」
アーニャが笑った。
「『可能な限り殺すな』だって? 魔族が戯言を……」
隣でシオンが怒りの声を上げた。
彼は、魔族に対する憎しみが強い。
たとえ敵が自分より格上であっても、臆することなく向かっていくのは、その憎しみゆえだろう。
「お前たちは俺が倒す……!」
「だから、あたしたちは別に敵対したくないんだって。あなたたちが襲ってくるから自衛してるだけ」
「ふざけるな! 先に人間界を侵略しに来たのはお前たちだろう」
「んー、水掛け論ってやつだねぇ」
アーニャが苦笑した。
「とりあえず、あたしが魔王様から受けている命令は『仲間を守る』ことだけ。あなたたちが襲ってくれば身を守るために戦うけどね」
「自分たちからは攻撃するつもりがない、ってこと? ふん」
ティアナは吐き捨てた。
こちらの混乱を誘うための話術だろう――。
【大切なお知らせ】
新作の書籍版、発売中です!
今までの僕の書籍化作品と違い、今回はウェブ版から内容が大幅に変更され、新エピソード満載です! とはいえ、基本コンセプトの勇者シオンと魔王ヴィラがイチャラブする部分などはそのまま……というかラブ度300パーセント増しくらいになっているので、ぜひよろしくお願いします~!
広告の下にある書影から各販売サイトへ飛べますので、ぜひぜひ!