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3 初めての強敵

 現在、ティアナが所属しているのは『汎人類連合騎士団』という。


 その名の通り世界各国から精鋭や有志を募り結成された、国家の枠組みを超えた騎士団である。


 日に日に増えてくる魔王軍の侵攻に対抗するため、この騎士団は世界中で戦っていた。


 ティアナが所属する一隊に、その日新たな討伐任務が下った。


 さっそく彼女は他の騎士たちと一緒に現場へと向かう。


 その中には、先日知り合った下級騎士シオンもいた。


「き、緊張しますね……」


 彼は青ざめた顔をしている。


「何よ、怖いの?」


 と言いつつ、ティアナも魔族討伐ミッションはまだこれが五回目だ。


 緊張していない、といえばウソになる。


 だが、だからこそ堂々と――他者に舐められないように凛々しく。


 それがティアナの矜持だった。


「俺は……子どものころに、魔族に村を全滅させられたんです」


 シオンがつぶやいた。


「それがトラウマになってるわけ?」

「……そのとき、俺を守ってくれた騎士がいました。その人は、俺をかばって殺されて――だから怖いんです」


 シオンが顔を上げた。


 だが、その表情に浮かんでいるのは怯えではない。


「魔族が怖いんじゃない。いえ、怖くないわけでもないけど……でも、何よりも――俺のせいで誰かが死ぬのが怖い」


 強い決意が、その顔にみなぎっていた。


「だから、俺はもう二度と――目の前で誰かが死ぬのは見たくない。俺の剣で、すべてを守る」

「決意はご立派ね。腕が伴ってないけど」

「うう……そうなんですよね」


 ティアナの指摘にシオンはうなだれた。


「がんばります……」

「ふふ、あなたなりにがんばりなさいよ。あたしはあたしで強さを見せつけてあげるから」


 ティアナがふふんと鼻を鳴らす。


「見習います……」


 シオンはこちらをジッと見つめていた。


 尊敬か、憧れか。


 キラキラした目で見られると、ティアナは自尊心を心地よくくすぐられた。


「――っと、見えてきたね」


 前方に魔族の一団が見えた。


 先頭にいるのは銀髪に褐色の肌した女魔族。


 他にも女性型の魔族が十数人いる。


 周囲には吹雪が巻き起こっており、氷雪系の魔法を得意とした眷属のようだ。


「魔族の一隊――このあたしが倒す!」


 ティアナは闘志を燃やした。


 だが、ティアナの想像以上に敵部隊は手ごわかった。


「こいつ、強い――」


 今まで戦ったことがある魔族とは桁違いの強さだ。


 特に部隊のリーダーらしき少女の強さは群を抜いている。


「あたしは『氷雪剣』のアーニャ! 魔王軍四天王筆頭よ! ほーら、全員凍っちゃえ♪」


 彼女が剣を繰り出すと、猛烈な吹雪が一面に吹き荒れた――。

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