3 ライゼルの話2
後書きに【大切なお知らせ】があります!
「じゃあ、今から僕のメリットを説明するぞ」
「頼む」
俺は思わずかしこまった。
ライゼルが苦笑する。
「まったく……こっちの力が抜けるな、お前といると。僕はさっきまで身構えっぱなしだったのに」
「別に今は敵対するために来たわけじゃないからな。メリットがあるなら教えてほしい」
俺は彼に言った。
「じゃあ説明するぞ」
調子狂うなぁ、とつぶやきながら、ライゼルが話を始めた。
「お前は魔王の夫だろう? そのお前に恩を売るのは悪くない。何せ僕の立場は最悪だ。魔王への反逆者の息子だからな」
「なるほど……」
「今の魔王が苛烈な性格なら、僕なんてとっくに処刑されてるさ。いや魔王ヴィラルヅォードだって内心では処刑を考えているかもしれない……」
言って、ライゼルは俺を見つめた。
「だから、お前の方から僕のことを魔王にとりなしておいてくれ。交換条件だ」
「分かった」
俺はうなずいた。
ライゼルの提案について特に反対する理由はない。
「任せてくれ」
「じゃあ、教えてやる」
ライゼルはあらためて俺に向き直った。
「人間が魔族になる方法――それは『進化のダンジョン』に入ることだ」
「進化のダンジョン……?」
初めて聞く言葉だった。
「なんだ、それは」
「名前から想像がつくだろう。他の生物が魔族に進化するためのダンジョンさ」
と、ライゼル。
「実際、野生のモンスターがそのダンジョンの試練を潜り抜け、魔族に生まれ変わった例もいくつか報告されている。試した者はいないけど、おそらく人間でも試練に打ち勝てば魔族に転生できるだろう」
「なるほど……」
俺はうなった。
「試してみる価値はありそうだ。そのダンジョンはどこにある?」
俺はヴィラには内緒で、その『進化のダンジョン』までやって来た。
情報が漏れないよう、供の者は連れてきていない。
「いよいよか……」
洞窟の前で俺は深呼吸をした。
「緊張してきた」
「シオン、一人で来てよかったのか?」
ファリアがたずねる。
彼は現在、青年の姿に実体化していた。
「あまり大っぴらに言う話でもないし、このことを知る者が増えれば増えるほど、ヴィラに話が伝わる可能性が大きくなる」
「どうしても彼女には言いたくないわけか」
「魔族になることを選んだのは俺自身の意志だ。でも、彼女はそう考えないだろう。『自分のせいでシオンが無理をして人間を捨てようとしている』……そう考えると思うんだ。ヴィラの性格なら」
「……ふむ。魔族にしては……そして魔王にしては優しすぎる面があるからな、ヴィラルヅォードは」
「ああ」
まあ、そういうところが好きなんだけれど。
「ん? 心の中で惚気ただろう、今?」
ファリアに言い当てられてしまった。
ちょっと恥ずかしい。
「と、とにかく、俺は魔族になる。既成事実を作ったうえで、ヴィラにそれを明かすんだ。協力してくれ、ファリア」
「了解だ」
【大切なお知らせ】
書籍版が4/25発売予定です。今までの僕の書籍化作品と違い、今回はウェブ版から内容が大幅に変更され、新エピソード満載です! とはいえ、基本コンセプトの勇者シオンと魔王ヴィラがイチャラブする部分などはそのまま……というかラブ度300パーセント増しくらいになっているので、ぜひよろしくお願いします~!
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