8 VS暴風王
「これほどの力を――」
右腕を斬り落とされた暴風王は、わずかに顔をしかめた。
「ヴィラを離せ!」
俺は暴風王に叫んだ。
ヴィラを助けに行きたいが、彼女を拘束しているのは風だ。
物理的な攻撃では破壊できないし、魔法やスキルの類で吹き飛ばしたら、彼女にまで攻撃の余波が及ぶかもしれない。
「くくく、怒っているのか?」
暴風王は右腕を斬り落とされたというのに、すぐに余裕を取り戻したようだ。
まさしく王者の風格で泰然とたたずんでいる。
「この女とお前は政略結婚だろう?」
「うるさい!」
俺はさらに聖剣を振るった。
衝撃波で暴風王の胸元を深々と切り裂く。
人間ならとっくに致命傷だが、さすがに高位魔族の生命力は並ではない。
「ふう……大したものだ。この私をここまで一方的に痛めつけるとは」
痛みを感じていないのか、暴風王はあいかわらず平然としている。
「力の差は分かったはずだ。いくらお前が魔王と同等以上の力を持っているとしても、俺には通用しない」
油断なく聖剣を構える。
こいつは正々堂々と戦う武人のようなタイプじゃない。
明らかに策士だ。
どんな罠を仕掛けてくるか分からない。
「……分かった、降参だ」
暴風王が剣を鞘に収めた。
「な……に……?」
あまりにもあっさりと降参を宣言した相手に、俺は拍子抜けする。
――もちろん、油断はしない。
何かを企んでいる気配が漂ってくる。
「ふふふ、信用できんか? 実際に手合わせして分かった。お前の力は恐るべきものだ。この私でさえ対抗できそうにない」
暴風王は俺をまっすぐに見つめた。
「武力では、お前の方が明らかに上だな」
「じゃあ、ヴィラを――」
「お前を認めるのにやぶさかではない。だが、少し話し合いをしようではないか」
暴風王は軽く笑い、ふたたび玉座に腰かけた。
「話し合いだと?」
こいつ、何を考えている――?







