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3 暴風王の城

「す、すごい……一撃で……」


 アーニャが呆然としているようだ。


「また強くなってないか、シオン……?」


 ヴィラの方も驚いた様子だった。


「かっこいい……」

「えっ」

「あ、いや、その、思わず、つい言っちゃった……えへへ」


 照れたように笑うヴィラ。


 うん、かわいいぞ。


 魔力光線はなおも断続的に放たれる。


 ざしゅっ、ざしゅうううっ!


 俺は聖剣を縦横に振るい、それらをことごとく斬り払った。


「キリがないな……」


 攻撃が止む気配はない。


 俺がこうして前面に立っている限り、城からの攻撃が俺たちを傷つけることはない。

 けれど、前に進むこともできない。




「暴風王! いいかげんにしないか!」




 ヴィラが叫んだ。


「この魔王ヴィラルヅォードが直々に出向いたのだぞ。それに対してこの仕打ち――一体どういう了見か、説明してもらおうか」

「――失礼いたしました、魔王様」


 ふいに攻撃がやんだ。


「この迎撃システムは私の意志にかかわらず、自動的に侵入者を攻撃しますゆえ、対応が遅れました」


 言いながら、暴風王には悪びれた様子がない。


「魔王様がこの程度の迎撃にやられるはずもなく……実際にあっさりと切り抜けられていて、頼もしい限りです」

「……面白がっているように見えるが?」

「よい部下をお持ちだと羨んだだけでございます」

「シオンは部下ではない。我が夫だ」


 ヴィラが言い放った。


「――ほう」


 暴風王の声音がわずかに変わる。


「そのことでお前に話がある。会ってもらえるか?」

「無論でございます。正門にお降りください。今、案内の者をよこします」




 俺たちは城の正門に移動した。


 そこには黒衣をまとった美しい青年魔族が控えていた。


「これは魔王様、当方の手違いにて大変失礼をいたしました。平にご容赦を――」


 跪いて一礼する魔族。


「それにしてもあいかわらず美しい……俺のことを覚えておいででしょうか?」

「当たり前だ、ライゼル」

「これは光栄の極み。ふふ、ご結婚なされたというのが残念ですよ。あなたを俺のものにしたかった……」

「無礼な!」


 アーニャがいきなりキレた。


「ヴィラちゃん……じゃなかった、魔王様はあたしのものなんだからね!」

「いや、キレるポイントそこなのか」

「当然!」


 アーニャは鼻息が荒い。


「まったく……」


 ヴィラは肩をすくめた。


「今のは冗談と捉えておくが、最低限の礼儀はわきまえよ」

「失礼いたしました、魔王様」


 ライゼルはふたたび一礼する。

 その視線は粘っこくて、ヴィラの全身に絡みつくようだ。


 俺はなんともいえない不快感を覚えた。


 自分の大切なものが汚されているような気がする視線だった。

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