2 最強勇者の力
俺たちはヴィラの移動魔法で空を飛んでいた。
「移動手段がヴィラに頼りっきりで悪いな」
「気にするな。適材適所というやつだ」
俺の言葉に笑うヴィラ。
「アーニャは剣術と攻撃系魔法を得意としているが、こういう補助系の魔法はいっさい使えない。シオンだって戦闘用の魔法以外はほとんど習得してないんだろう?」
「ああ。移動系は旅に便利だから覚えようとしたんだけど、全然だめだったよ……俺には適性がないらしい」
苦笑する俺。
「移動系の魔法ならカトレアが得意だったな」
『聖女』と呼ばれた、かつての仲間を思い出す。
「むむ……別の女の名前……」
「えっ!? いや、勇者パーティ時代の仲間だよ。君だって名前くらいは知ってるだろう」
「あ、ああ、そういえば……いかんいかん、つい焦ってしまった。許せ」
小さく頭を下げるヴィラ。
「ヴィラちゃん、ヤキモチ焼いたんだ、かわいい」
「う、うるさい!」
からかうようなアーニャに顔を赤らめるヴィラ。
「心配することないって。もうヴィラちゃんの『夫』なんでしょ?」
「!?!?!?!?」
ヴィラの顔がさらに真っ赤になった。
「人妻ヴィラちゃんもかわいいぞ~」
「や、やめてぇぇ……」
たちまちヴィラの声音がふにゃふにゃになる。
――と、そのときだった。
前方に赤い輝きが生まれたかと思うと、すさまじい衝撃が走った。
「なんだ――!?」
俺たちは空中でバランスを崩しつつも、なんとか建て直す。
「また来るぞ!」
ヴィラが叫んだ。
さっきのふにゃふにゃの声から、すでに魔王モードに戻っているところはさすがである。
そして、その言葉通り、赤い魔力光線らしきものが次々に飛んできた。
空中の俺たちを完全に狙い撃ちしている。
「くっ、これは――」
ヴィラがうめいた。
「この城の迎撃システムか? 私が分からないのか、暴風王!」
城に向かって叫ぶ。
が、光線群はやむ気配もなく、次々と放たれる。
「とりあえず、まとめて薙ぎ払う」
俺は前に出た。
聖剣ファリアレイダを抜く。
「頼むぞ、ファリア」
「了解だ、シオン」
俺は聖剣をかかげ、刀身に『力』を込めた。
そして――、
「はあっ!」
気合い一閃、振り下ろした剣から衝撃波がほとばしり、無数の魔力光線をまとめて斬り散らした。







