9 魔界へ
雷撃でひるんだ竜牙兵の動きが止まる。
俺はすかさず距離を詰め、剣で叩き伏せた。
もちろん竜牙兵を破壊するほど強くは打たない。
とはいえ、実戦ならこれでカタがつくような形勢だった。
「だいたい、分かった。いったん終了だ」
俺はバッシュに言った。
「竜牙兵は思った以上に鍛えられているよ。ただ魔法攻撃の威力を見た後で、動きが完全に止まっていた。陣形を崩されても、すぐに立て直せるように……その辺りはもうちょっと訓練を積んだ方がよさそうだ」
「なるほど……訓練メニューに加えます!」
バッシュがうなずく。
「練度はすごく高いし、今の調子で鍛えてほしい」
「うむ。竜牙兵団として魔界の防衛線力に加えよう。その責任者はお前だ、魔王竜バッシュ」
と、魔王モードで命令するヴィラ。
「謹んで拝命いたします」
バッシュはその場に跪き、恭しく頭を下げた。
「それにしても――あたしたち息ぴったりだったね、シオン」
ヴィラが振り返って微笑んだ。
本当に嬉しそうだ。
実際、俺たちの連携は確かに呼吸がすごく合っていたように思う。
戦いのパートナーとしても俺たちは相性がいいんだな。
「これぞ夫婦って感じじゃない? あ、夫婦ってストレートに言っちゃった……やっぱりまだ恥ずかしい……えへへへ」
言いながら、もうデレデレの雰囲気が可愛らしい。
俺までデレデレした気分になってしまう。
「……なんか、魔王様、キャラ変わりすぎじゃないですか……?」
バッシュがぼそりとつぶやいた。
その後、こまごまとした打ち合わせの後、俺たちは去ることにした。
「じゃあ、俺たちは魔界に行くよ」
「留守の間、魔界の防備を頼むぞ」
俺とヴィラが魔王竜バッシュに言った。
「お任せを……!」
バッシュが恭しくうなずく。
そして――俺とヴィラは魔界へと赴く。
俺にとっては初めて足を踏み入れる異界の地。
不安はある。
けれど俺の傍にはヴィラがいてくれる。
だから、何も恐れず突き進んでいこう」。
決意を新たに、俺はヴィラとともに飛ぶ。
いざ、魔界へと――。
次回から第5章になります。2週間ほどお休みをいただき、12/27から更新再開予定です。
気長にお待ちいただけましたら幸いです。







