8 魔界の防備を強化する
「あ、シオンさん! お久しぶりです! っていうか、ご結婚おめでとうございます!」
「ありがとう。ま、正式な結婚はまだだけどな。正式な手続きには魔界の有力諸侯の承認を得たり、色々ややこしいみたいだから……」
答える俺。
「その辺りの法的なものや慣習的なものは一つ一つクリアしていくさ。ただ、実質的に私とシオンはもう夫婦としての生活に入っている」
言いながら、ヴィラは顔を赤くした。
「……夫婦って口に出すと、まだ恥ずかしいぃ……」
本当に照れ屋だな、ヴィラは。
「幸せそうで何よりです!」
バッシュが直立不動になって言った。
「竜牙兵の練度はどうだ?」
「はい、自信をもってお見せできるレベルに仕上がってきましたよ」
バッシュがニヤリと笑う。
どちらかというと自信のなさそうな顔がデフォのこいつにしては、かなり強気な様子だ。
それだけ竜牙兵の練度に自信があるんだろう。
「よかったら、試されますか?」
「そうだな。バッシュ、竜牙兵たちに連携させて俺を襲わせてくれ」
「待て、一人で戦うのか?」
と、ヴィラ。
「ああ。訓練の仕上がり具合を実際に味わってみたい」
「ひ、一人では心配だ! 私も一緒に戦う」
ヴィラが身を乗り出した。
「訓練だし、そんなに危険なことはしないって。大丈夫だよ」
「やだやだやだやだやだ」
いきなり駄々をこねるヴィラ。
うっ、ちょっと可愛いな……。
「じゃあ、ヴィラは後衛で魔法担当を。竜牙兵を壊さないように威力を絞ってくれ」
「やった! シオンとの共同作業だね♡」
にっこり笑うヴィラは、ますます可愛かった。
そして模擬戦形式の訓練が始まった。
俺とヴィラが中央に立ち、竜牙兵が四方から襲ってくる。
「――速い!」
俺は舌を巻いた。
以前とは竜牙兵の動きが見違えるようだ。
しかも連携してそれぞれの攻撃タイミングをわずかにずらし、こちらが防御しづらいように動いている。
「すごいなバッシュ……こんな短期間でよくここまで訓練した……!」
俺は感心した。
以前に感じた魔王竜バッシュの『伸びしろ』はやっぱり本物だったのかもしれないな。
あいつ自身の戦闘能力は正直そこまで高くない。
けれど、別の能力――竜牙兵の訓練という技能で、これだけの『強さ』を体現できるのだ。
「【雷撃】」
後方からヴィラが稲妻を放った。
さすがにフルパワーだと竜牙兵がまとめて吹き飛んでしまうので、かなり手加減した一撃のようだ。
ばりばりばりっ……!
それでも地面があちこち爆裂して吹っ飛んでるけど……。
さすがは魔王の魔法だった。







