6 ティアナたちは今後の方針を話し合う
SIDE ティアナ
メリーアンとパーシバルが去り、ティアナたち四人は今後の方針を話していた。
「ふう、とりあえず――すぐに断罪されることはなさそうね」
言いながらも、ティアナの表情は険しい。
他の三人も同様だ。
今回の処置はあくまでも破滅の時が少し伸びただけに過ぎない。
自分たちの首元には刃がつきつけられている状況だ。
そしてそれはパーシバルやメリーアンの一存で、いつでも彼女たちを斬り裂くだろう。
「これからどうする? いっそメリーアンもパーシバルも殺す?」
「短絡的すぎる。もうちょっと反省して」
ユーフェミアにたしなめられてしまった。
「あはは、まあ極端な意見よね」
「ですが、気持ちとしては私も同じですわ」
カトレアが言った。
その目に暗い光を宿して。
「私たちは確実に追い詰められています。勇者殺しと王女殺し――いずれも未遂とはいえ、それが明るみに出れば世界は私たちを糾弾します。英雄の名誉は地に落ちるでしょう」
「だね。ボクたちスーパーヒロインからあっという間に悪役にクラスチェンジだよ? もう最悪~」
イングリットが顔をしかめる。
「まだ手はある」
ユーフェミアが言った。
「さすがユーフェミア、頼もしい~」
「茶化さないで。すべての元凶はあなた」
ユーフェミアがティアナを見据える。
「……!」
冷たい視線にゾッとなった。
何かあれば、彼女は自分を切り捨てるのではないだろうか。
そんな酷薄さが伝わってくる。
「パーシバルとメリーアンは私たちの所業を他には漏らさないはず。少なくとも当面は」
ユーフェミアが語る。
「特にパーシバルは私たちを『戦力』として当てにしている。それを失いかねない愚行は避けると推測。メリーアンは精神的に不安定だから、気を付けてみておく必要があるけれど」
「……そうね、確かに」
「現状はパーシバルたちに従順に行動。魔王軍と戦い、戦果を挙げて――私たちこそが救世の乙女であるとアピールし続ける」
ユーフェミアが告げる。
「一方で準備を進めて、パーシバルとメリーアンを懐柔する」
「懐柔? できるの、そんなこと?」
「【精神操作】の魔法を使う」
ユーフェミアが言った。
「王族である彼らに状態異常系である【精神操作】は通じない。だから、それが通じる土台を作っていく。時間はかかるだろうけど、不可能ではない」
「彼らを洗脳する、ってことね」
「そういうこと。表向きは彼らに従い、その準備期間を稼ぐ――それが当面の私たちの方針」
ユーフェミアが告げた。
「分かったわ。あたしもそれに従う」
「ですね」
「りょーかい」
四人の意志は一致した。
だが、ティアナはなおも不安だった。
ユーフェミアは他にも何か企んでいるのではないだろうか?
自分を見つめたときの冷然とした視線が、どうしても気になる。
いざとなれば彼女は、ティアナや、あるいはカトレア、イングリットを切り捨て、自分一人だけ助かる道を選ぶのではないだろうか?
そんな不安が――消えなかった。