4 揺らぐ心
「ティアナたちを処罰するのは簡単だ。勇者を殺そうとした罪、そしてお前を一度は殺した罪……この二つを持って世界に問えば、彼女たちは糾弾されるだろう」
パーシバルが言った。
「たとえ、世界を救った乙女たちといえども……な」
「私もそう思います、お兄様」
メリーアンが力強くうなずいた。
「さあ、あなたたちに終わりの時が来ましたよ、ティアナ、カトレア、イングリット、ユーフェミア」
心の底から黒い衝動が湧き上がる。
シオンを殺したこの四人を絶対に許さない。
どんな処断があるにせよ、簡単には殺さない。
殺させない。
そうだ、じわじわと苦しめ、人としての尊厳をすべて踏みにじり、苦しみ抜いて殺してやる――。
メリーアンはいつの間にか笑っている自分に気づいた。
これは悦び――だろうか?
復讐とは、これほどまでに甘美なものなのか。
シオンを失って以来、苦しくて、悲しくて胸が張り裂けそうだった。
なのに今、心の底から湧き立つような甘い衝動は、一体なんだろう――?
「どうした、メリーアン……?」
パーシバルが眉を寄せて、こちらを見ている。
やけに険しい表情だ。
「お前、様子が変だぞ……?」
「……気のせいですわ、お兄様」
メリーアンが首を振った。
「さあ、この者たちへの処罰を決めましょう。もちろん、簡単に死罪には――」
「いや、そのことだが、俺に考えがあるんだ。聞いてもらえるか」
パーシバルが彼女の言葉をさえぎった。
「彼女たちの力は貴重だ。魔王は生きていた。これに立ち向かうには、ティアナたちの力が不可欠だ。今、殺すわけにはいかない」
言って、メリーアンを見つめるパーシバル。
「彼女たちの処罰は一時、この俺が預かる。どうだ?」
「うう……」
メリーアンが唇をかみしめた。
「それに――お前が一番気になるのは、もはやティアナたちではあるまい?」
「……?」
兄が何を言おうとしているのか分からず、メリーアンは首を傾げた。
「勇者シオンのことこそ、お前にとって最重要事だろう」
「ええ、私はあの方を――愛しておりました」
「シオンは生きている」
パーシバルの言葉に、メリーアンは言葉を失った。







