2 王女メリーアンの復活、そして
気が付くと、暗い部屋の中だった。
「ここは――」
彼女……王女メリーアンがつぶやく。
空気がひやりとしていた。
石造りの建物の内部のようだが、自分はなぜこんな場所にいるのだろう……?
まだ頭の中が混濁しているような感覚があった。
深い――深い眠りから目覚めた直後のような。
「私は……」
少しずつ意識がはっきりしてくる。
「私……ああ、そうか。私は一度殺されたのですね……」
彼女は王家に伝わる秘宝『仮死の護符』を装備した状態で、勇者パーティのティアナたちに『殺され』た。
秘宝の効果により、三日経った今、よみがえることができた。
「じゃあ、ここはどこ――?」
どうやら自分は床の上に寝かされていたようだ。
全身がこわばっている。
普通なら風邪を引きそうなところだが、なんともないのは『仮死の護符』が体を最低限守ってくれていたおかげだろう。
薄闇に目が慣れてくると、壁に翼を象ったマークが描かれていることに気づいた。
至高神ベルーガの紋章――。
ということは、ここはベルーガの神殿内だろうか。
「とりあえず……私はまだ生きている」
まずは、それを喜ぼう。
火葬されていなくてよかった、といったところだ。
もっとも、この国の法により、直系王族が死亡した際、遺体は二週間、魔法で保存処置をしたうえで様々な儀式を行うことになっている。
だから、メリーアンが仮死状態の間に彼女の体が火葬されたり、埋葬されたり、その他の損壊を受けることはまずないと踏んでいたが。
「さて、彼女たちにどう始末をつけるか……慎重に動かなくてはいけませんね」
かつ、かつ、かつ……。
そのとき前方から足音が近づいてきた。
ギョッとして身をこわばらせるメリーアン。
一体誰が――?
振り返ると、四人の人影が前方から歩いてくるのが見えた。
「えっ、メリーアンが動いている……!?」
「嘘、死んでない――」
「そんなはずない! ボクたち全員で王女の死を確認したはず!」
「ならば、考えられることは一つ――蘇生手段を最初から用意していた」
振り返れば、そこにはティアナたち四人の『勇者パーティ』の姿があった、
「しまった、最悪のタイミングで――」
メリーアンがうめく。
『仮死の護符』は一つだけ。
次に殺されたら、彼女は本当に死んでしまう。
まずはこの場を逃げることを考えなければ――。







