表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/122

20 魔王様の乙女の悩み2

「ん、勇者と結婚って戦略的なものなんだよね? いわゆる『政略結婚』の一種でしょ?」

「まあ、そうだな……」


 アーニャの質問にうなずくヴィラ。


 我ながら歯切れが悪い答えで嫌になる。

 シオンのことを他人に話すと、とたんに羞恥心が一気にこみ上げて冷静でいられないのだ。


「ねえ、もともとヴィラちゃんは勇者のことを意識してたの?」

「えっ、それは――」

「勇者と一緒にいても、そこまで緊張してなかったよね?」

「ああ。シオン相手に緊張……というのはないな。心がときめいたりはするけれど……」

「むむむ」


 アーニャが不機嫌そうな顔になった。


「ま、いいか。ヴィラちゃんがあいつを意識してる風なのは気に食わないけど……とにかく、今までとは違うんだね?」

「ああ、明らかに……違う」


 今までは、ここまで極端に気持ちが高ぶることはなかった。

 一体なぜなのか――。


「うーん……たぶん『結婚』っていうのが引き金になったんじゃない?」

「えっ」

「今までも、たぶん潜在意識では強く意識していたのよ。ヴィラちゃん、純情だし。周りに同年代の男なんてほぼいなかったでしょ。恋愛経験もゼロだし」

「う、うむ……」

「そこに若くて凛々しい勇者登場! ヴィラちゃん、恋心一直線! ――になったわけ」


 アーニャがぴんと人差し指を立てて解説する。


「……そ、そうだな。私はいつの間にかシオンにどんどん惹かれていった。けれど、その気持ちはちゃんと制御できていたつもりだ」


 ヴィラが言った。


「私はこれでも魔王だからな。その責任感は持ち合わせているぞ」

「うん、そういうところ、すごく好き♡」


 アーニャが投げキスをした。


「ま、とにかくヴィラちゃんは今まで自分を抑えていたわけよね? でも結婚となれば、もう抑えなくてもいい――無意識にそう思ったんじゃない?」

「……それはあるかもしれない」

「で、タガが外れちゃったんだろうね。自分でもどうやって自分の気持ちを制御していたか、分からなくなるくらいに」


 アーニャがくすりと笑う。


「要するに――ヴィラちゃんは結婚という事実に舞い上がって暴走気味、ってことね。はい、あたしの説明おしまい!」

「そ、そんな単純なことだったのか?」

「そんな単純なことに気づけないヴィラちゃんは、本当に可愛い♡」


 アーニャが笑う。


「とにかく、勇者からいきなり逃げたのはよくないんじゃない? 向こうは『ヴィラに嫌われたんじゃないか?』なんて不安になってるかもだよ」

「そ、それはいかん! 私はすぐに部屋に戻る!」


 ヴィラは慌てて駆けだす。


 と、その足を止め、


「ヴィラちゃん?」

「話を聞いてくれて、ありがとう。アーニャ」

「どういたしまして。お幸せにね、ヴィラちゃん」


 言って、アーニャは小さく顔をしかめた。


「あーもう、あんなポッと出の勇者にヴィラちゃん取られて悔しい……」


 最後に悪戯っぽく付け加えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して
★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


▼コミカライズ連載中です!(漫画:えびど~先生) お気に入りやコメントいただけると嬉しいです!▼


ziijnnz431v4raji2tca3fijcq9_o6n_nc_xc_jzab.jpg

▼コミック2巻、9/19発売です!▼



ziijnnz431v4raji2tca3fijcq9_o6n_nc_xc_jzab.jpg

▼書籍版、発売中です!(書影クリックで公式ページに飛べます)▼



ziijnnz431v4raji2tca3fijcq9_o6n_nc_xc_jzab.jpg


▼カクヨムの新作です! こちらもよろしくです~!▼

敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ