19 魔王様の乙女の悩み1
SIDE ヴィラ
魔王ヴィラルヅォードことヴィラは、側近であり幼なじみの親友でもある『氷雪剣のアーニャ』の元にいた。
銀色の髪に褐色の肌をした美女である。
「勇者のところから逃げてきた? ヴィラちゃんが?」
「私のことは魔王と呼べ、アーニャ」
「えー、今はプライベートだし、いいじゃない」
「む……」
「いいよね、ヴィラちゃん。だいたい、ヴィラちゃんだってあたしに相談したいことがあって来たんだよね? だったら堅苦しい話し方はなし。いい?」
屈託なく笑うアーニャ。
ヴィラはため息をつき、
「まあ、いいか。その話し方を許可する」
「やったー! あ、ヴィラちゃんも普通にしゃべっていいよ~」
「私は普通だ」
「嘘。勇者の前では、もっと普通の女の子っぽいしゃべり方するじゃない」
「っ……!?」
「あたし、知ってるよ。結婚宣言のときに、二人のやり取りが聞こえてきたもん」
「う、聞かれていたのか……」
ヴィラは顔中が熱くなるのを感じた。
恥ずかしさと照れくささが急激にこみ上げてきたのだ。
「あははは、いいじゃない。あたしはヴィラちゃん、すごくかわいいなぁって思ったよ?」
嬉しそうに語るアーニャ。
「やっとヴィラちゃんに春が来たかと思うと嬉しいよ」
「最初はシオンに食って掛かっていたじゃないか」
「あれは、どこの馬の骨とも分からない男がヴィラちゃんに迫ってると思ったからだよ。でも、この間の態度を見てると、ヴィラちゃんも――っていうか、むしろヴィラちゃんの方が勇者にメロメロじゃない。だったら応援してみようかな、って気持ちになってきたの」
「わ、わ、私は別にメロメロじゃない……」
ヴィラは慌てて抗弁した。
「本当?」
「ほ、本当だ……」
「目が泳いでるけど?」
「…………そ、それは」
「目が泳いでるけど?」
「むむむ……」
「目が」
「三回も言うな! ああ、もうっ、そうだ! 私はシオンにメロメロだ! はっきり言って恋する乙女だ!」
ヴィラは絶叫した。
「はあ、はあ……」
「ふふ、やっと素直になってくれた」
アーニャはますます嬉しそうな顔になった。
「で、相談っていうのは、そのことでしょ?」
「どう接すればいいのか、分からないのだ……恥ずかしくて……」
ヴィラはうつむいた。
生まれて初めての――『恋の相談』だった。







