18 ファリアに呆れられる
聖剣ファリアレイダに宿る存在――俺はそいつに『ファリア』と名前を付けた。
外見は白いローブをまとった銀髪の美青年。
「話を聞いた限り、魔王は君に明らかな好意を持っている」
ファリアが言った。
「求婚するほどにな」
「いや、結婚はあくまでも戦略的な話だよ。恋心とかじゃなく、対外的に人間の国々に――」
「もちろん、それはあるだろう。だが、それだけではないと思う」
ファリアが淡々と言った。
「……もしかして、彼女の気持ちに全然気づいてないのか」
「だから、何言ってるんだよ? ヴィラが俺に恋してるって言いたいのか?」
「どう考えても恋してるぞ」
「ないない」
俺は両手を振った。
「……鈍感だな、君は」
ファリアがため息をついた。
「私は人間ではないが――君よりは、人の心の機微に詳しい気がするぞ」
「俺、そんなに鈍感か?」
なんか不安になって来たぞ。
三十分ほど経ったが、ヴィラはまだ帰ってこない。
俺はファリアと二人で部屋にいた。
「探しに行った方がいいかな……」
「入れ違いになるかもしれないし、ここで待っていればいいのではないか?」
「ヴィラ、なんで出ていったんだろう?」
「……話が堂々巡りしているぞ」
「あ、悪い」
「まあ、それだけ彼女を心配している――想っている、という証か」
つぶやくファリア。
それから、ふいに笑みを消して真剣な表情になり、俺を見つめた。
「……シオン、一つ聞かせてくれ」
「なんだ?」
「君は――魔王と結婚することで平和が訪れると信じているのか」
「……確実に平和になるかどうかなんてわからない。けど、その可能性を
広げられる一手だと思っている」
俺はファリアに言った。
「だから俺は、この手に賭けてみたい。きっとヴィラも同じ気持ちだ」
「……分かった。ならば私は聖剣として、君のために力を尽くそう。君の判断を――信じよう」
「ありがとう、ファリア」
「それはそうとして、鈍感なところは直した方がいいぞ。結婚するんだから、なおさらだ」
「うーん、鈍感を直すって……どうすればいいんだ?」
「それはなかなかの難題だ」
「じゃあ、一緒に考えてくれよ。相棒だろ」
「ほう、バディか。いい響きだな」
ファリアがにっこり笑う。
「ご、ごめんね、シオン! 遅くなっちゃって!」
ヴィラが戻ってきたのは、ちょうどそのときだった。







