16 それぞれの動きは
「どうかなさったのですか、パーシバル様?」
聖女カトレアや弓聖イングリット、極魔導師ユーフェミアもやって来た。
勇者を除いた勇者パーティそろいぶみだ。
「ティアナには先ほど言ったが、我が妹メリーアンのことで聞きに来たのだ」
「……!」
三人の顔色がいっせいに変わる。
(――なんだ、いったい?)
彼女たちの雰囲気から、なぜかパーシバルを警戒しているような素振りが見えた。
警戒――となると、もしかしたらパーシバルが実はメリーアン失踪の黒幕だと目している、とかだろうか。
ならば彼女たちはパーシバルが知らない情報を得ている可能性がある。
「当然だが、俺は潔白だ。妹を心から案じている」
パーシバルは四人に言った。
「仮に君たちが俺を疑っているとして――俺にメリーアンを害する理由はないだろう? 兄妹仲だってずっと良かったし、そもそも俺の王位継承権は彼女より上だ」
「……まさか。パーシバル様を疑うなんて、あり得ません」
ティアナが慌てたように言った。
「とにかく何か情報があったら教えてくれないか?」
「あいにく、私たちは何も……」
ティアナが首を振った。
「ですが、親愛なるメリーアン様が行方不明とは、本当に心配です……もし何か進展がありましたら、私たちにも教えていただいてもよろしいですか?」
「ああ。妹を案じてくれる君たちの友情に感謝するよ」
パーシバルはうなずいた。
彼女たち四人の態度はいずれもメリーアンを案じているように思えた。
本当に、心から。
だが――だからこそ、何かが引っかかる。
パーシバルの中で勘が働いていた。
彼女たちの態度はあまりにも自然で――それゆえに、作為的だと。
※
SIDE ティアナ
パーシバルが去った後、ティアナたちは話し合っていた。
「なんだ、あたしたちを疑って来たのかと思えば……とんだ拍子抜けね」
「いえ、まだ安心は禁物ですわ。わたくしたちをそうやって油断させることが目的かもしれません」
「だね。あの王子、案外単純なのか、それともそれは見せかけで、裏の裏をかいてくるのか――」
「私たちは王女殺しという大罪を背負っている。慎重な行動が必要――」
現状では、自分たちを取り巻く環境がどう変わるか、どう転ぶか――分からない。
そのときどきで最善手を打つしかないのだ。
その中でも、自分たちの所業を知っている勇者シオンの抹殺は最上位の優先事項といえるが、しかし――。
(魔王国の中にいるんじゃ、簡単に手を出せない……ちっ)
そして、それと同様の優先度があるのは、メリーアン姫のことだろう。
「……ねえ、メリーアンの遺体を確認しにいかない?」
ティアナが提言した。
どうにも、嫌な予感がするのだ――。







