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14 勇者と魔王の結婚2

「我が臣民よ。ここに宣言する。この私、魔王ヴィラルヅォードは人間の勇者シオンと婚姻するものとする!」

「うおおおおおおおおっ!」


 王城のバルコニーから宣言したヴィラに、眼下の民たちが歓声を上げる。


「ん、意外に歓迎ムード……?」

「以前から民たちは停戦を願っていたからな。戦争にはもう……みんな疲れていたんだ」


 ヴィラが振り返って俺に言った。


 この間の彼女の求婚から、たった二日後。

 彼女の動きは迅速で、あっという間に勇者と魔王の結婚を全国民に向けて宣言する運びとなったのだった。


「随分と急展開だな……」


 俺は彼女にだけ聞こえる声で苦笑した。


「戦乱を収めるための一手だ。できるだけ早く打ちたい」


 周囲に人の目があるので、ヴィラは魔王としての口調だ。


「シオン、その……一つお願いしてもいいか?」

「ん?」

「キス……して」


 言って、ヴィラの顔が真っ赤になった。


 ナイフのようにとがった耳の先まで赤い。


「えっ? こ、ここで……!?」

「だ、だから、その、民たちに私たちが愛し合っているという姿を見せておく必要があってだな……」

「あ、そうか……」

「私だって恥ずかしいんだからな……っ」

「うん、見ただけでめちゃくちゃ分かる」


 俺は小さく笑った。


「……シオンは落ち着いてるな」


 ヴィラが俺を上目遣いに見上げる。


 まだ顔は赤い。


「いや、俺だって緊張してるし、恥ずかしさだってあるよ」


 俺は真剣な顔でうなずいた。


「ただ、ここまで来たら――腹をくくるしかないからな」

「同意見だ」


 言って、ヴィラが背伸びをした。


 そのまま彼女の顔が近づいてくる。


 えっ、いきなり!?


 内心で驚きつつも、俺はそれに合わせて彼女を抱き寄せ、静かに口づけを交わした。


 おおおおおおおおおおおおおおおおおっ……!


 眼下の民たちが歓声を上げる。


 ……やっぱり、めちゃくちゃ恥ずかしいな、これ。

 大勢の前で堂々とキスをするのって。


 抱き寄せたヴィラの体が細かく震えている。


 とても、あの恐ろしい『魔王ヴィラルヅォード』と同一人物とは思えないほどに――。

 今の彼女は、か弱い乙女だった。

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