11 勇者VS勇者パーティ1
SIDE ティアナ
「魔族に味方する? ならば、あたしたちはあなたを討たなければならない――」
ティアナがシオンをにらんだ。
シオンが生きているのは予想外だった。
だが、幸いシオンは、ティアナたちが彼を裏切ったことを話していない。
今のうちに殺してしまい、口封じをするのだ。
(ふふ。結局あなたはあたしたちに殺されるのよ、シオン)
ティアナはニヤリと笑って前に出た。
「パーシバル様、ここはあたしにお任せください」
「ティアナ? だが彼はかつての仲間だろう?」
「ええ、『かつての』仲間――ゆえに、あたしたち自身の手で決着をつけたいのです」
「……分かった」
パーシバルが下がる。
「みんな、いくわよ」
仲間たちに目配せしながら、ティアナは槍を構えた。
神槍ラムズウィール。
風と雷を操るおそるべき神器である。
「風よ渦巻け、雷轟け!」
呪言とともに穂先から竜巻と雷撃が発生し、シオンに襲いかかる。
ばぢぃっ!
彼が聖剣を一振りすると、風も雷もまとめて吹き飛んだ。
「なっ……!?」
ティアナが目を丸くする。
「あれ? 全然威力がないぞ、お前の攻撃――」
シオンの方も驚いたような顔だ。
「あ、あたしは全力で……ええいっ!」
ティアナがふたたび風と雷を放つが、結果は同じ。
シオンが軽く剣を振っただけで、全部吹き飛んでしまう。
「嘘でしょ――シオン、あなたここまで強かったの……!?」
もちろん彼は勇者としてパーティ中で最強の実力を誇っていた。
とはいえ、ティアナがまるで太刀打ちできないようなレベルではない。
なのに、今は――。
「【身体強化】【攻撃強化】【防御強化】!」
と、カトレアがティアナに各種の強化をかけた。
さらに、
「【サンダーブリット】!」
ユーフェミアが雷撃魔法を放つ。
ばりっ、ばりばりばりっ……!
が、それらはシオンの聖剣があっさりと吹き散らしてしまう。
「【百穿の矢】!」
さらにイングリットが放った無数の矢も、同じく簡単に防御された。
まったく隙がない――。
「悪いが、俺はこの国を守らなきゃいけない。お前たちを無力化させてもらうぞ」
言うなりシオンが突進した。
「速い――!」
カトレアによって強化を受けているティアナでさえ、まったく反応することができない。
「くっ……」
気が付けば間合いに侵入されていた。
すぐ間近にシオンの顔があった。
普段は穏やかで優しげな彼が、戦場では誰よりも凛々しい――。
思わずすべてを忘れて、ときめいてしまう。
がしゃんっ……。
シオンの聖剣の一振りでティアナの槍は砕け散った。
「きゃあっ……」
そのまま吹き飛ばされ、地面にたたきつけられる。
「退いてくれ、ティアナ」
シオンが言った。
こちらを見つめる瞳は悲しげだった。
「お前たちがやったことについては何も言わない。ただ俺はもう――お前たちを仲間とは思えない」







