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6 王国軍の侵攻1


「結界強化にしろ、竜牙兵の訓練にしろ、俺にできることがあれば協力するよ。一緒に平和への道を探ってみよう」

「勇者と魔王が手を組む……か。面白いね」


 ヴィラが微笑んだ。


「俺は……今でも勇者なのかな。魔王国にずっと滞在してるし、もしかしたら向こうじゃ裏切り者扱いになっているかもしれない。いや、死んだ扱いだろうから、それもないか」


 苦笑する俺。


「ただ、世界の人々が俺をどう思おうと、平和を望む心は変わらない」

「その心は、あたしも持ってるよ」


 ヴィラが手を差し出す。

 俺はその手をしっかりと握った。


 と、そのときだった。


「た、大変です、王国軍が攻めてきました!」


 室内に飛び込んできたのは、一人の女魔族だ。


 ポニーテールにした銀色の髪に褐色の肌、白銀の鎧をまとった美女。


 見覚えがある。

 確か魔王の側近をしている女騎士――『氷雪剣のアーニャ』だったな。

 すさまじい剣技を持つ強敵だった。

 けれど、


「あわわわわ……まずいまずいまずいですよ、これは! ねえ魔王様どうしようどうしましょう、やばいやばいやばい、ヴィラちゃん、あたし怖いよぉ……」

「落ち着け。それと私のことは魔王と呼べ」


 ヴィラが魔王としての口調に戻り、冷然と告げる。


 俺の前で見せる可憐な乙女のような態度もいいけど、こういう凛とした王としての威厳ある態度も魅力的だよな……。

 俺はそんな感想を抱いてしまった。


 ……なんだか、ヴィラを見る目が完全に『女性』を見る目になってしまっている。


「ご、ごめん、ヴィラちゃん」

「魔王」

「あ、そっか魔王ちゃんじゃなくてヴィラ様」

「いや逆」

「あわわわ……ごめんごめん、ヴィラちゃ……じゃなかった、ヴィラちゃん!」

「訂正できてないぞ……」


 ヴィラはジト目で彼女を見た。


「めちゃくちゃテンパってるな」


 この娘、こんなキャラだったのか。

 敵として相対したときは、本当に恐ろしい奴だったのに……。


「えへへ、あたし、戦場で吹っ切れると性格変わっちゃうんですよ。味方からも『キレると怖い』って評判で……」


 アーニャは照れたように言った。


「――って、勇者! なぜ魔王様と一緒にいる!」


 と、いきなり俺をにらみつける彼女。


「いや、気づくの遅いな!?」

「おのれ、こんな場所まで侵入したか……魔王様には手を出させんぞ!」

「ちょっと待て、アーニャ」

「魔王様はあたしが守る!」

「待てというに」

「覚悟ぉっ!」


 アーニャが斬りかかってくる。

 俺はとっさに身構え、


「【魔王雷霆(ロードボルト)】」

「ふぎゃぎゃぁぁぁぁぁっ!?」


 魔王級の雷撃を浴びては、さすがに高位魔族のアーニャもひとたまりもなかったようだ。

 あ、ちょっぴり黒焦げになってる。


「ヴィラって、けっこう容赦ないな……」


 まあ、魔王だからそんなものかもしれないが。


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